内容説明
マクファーレン老医師に仕えていた少年レンは、老医師の死後、医師仲間のウィリアムの元で働くことになる。実は老医師は死ぬ前に、ウィリアムの家にあるはずの自分の失った指を見つけ出し、死後四十九日以内に墓に埋めるように、レンに約束させていたのだ。指は見つからず、ウィリアムの周囲では人食い虎の被害者が連続する。指を失った老医師が人虎になった? 指がウィリアムが働くバトゥ・ガジャ地方病院にあると突き止めたレンは病院へ行くが……。人虎伝説に翻弄される人々の運命を描くニューヨークタイムズ・ベストセラーのファンタジイ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
67
彩り鮮やかな異国の情景のもと、いつしか物語は惹かれ合う智と信 姉弟の恋愛小説と化す。双子の片割れに死に別れた少年仁を彼岸の駅で密かに待ちわびる義の魂が夢に呼び掛けて幻想譚を物語るが、乙女が手にした人虎を連想させる指も、その少年の夢さえもそれぞれの名前に裏付けされた絆にすぎない。ドクターの身近に起こる都合の良い人死事件、伝説がミスリードする隠された礼の名を持つ存在の狂気の犯罪が我々読者にだけ姿を顕にする。2022/01/18
優希
46
幻想譚の色彩を持ちつつも、サスペンスの空気が流れています。裏に人がいて、ミステリーへと誘う展開には衝撃を受けました。上巻のファンタジックな空気と人虎伝説が流れる物語が絡みあい、ミステリアスさが生み出されているのでしょうね。2022/07/06
りー
31
イギリス統治下の1930年代マラヤ(現マレーシア)が舞台のファンタジー。とても楽しく読了。どちらかというとミステリーの要素が強いので、ファンタジー好きでなくても十分楽しめると思います。日本人にもなじみ深い四十九日=中有の世界を汽車とホームとして描いているところは、銀河鉄道の夜を思い出しました。「仁義礼智信」にまつわる名前が揃う設定も日本人なら、すっと入っていける。ジーリン&シン、不器用な2人の恋愛ものとしても最後まで楽しめます。大団円ではなく余韻を残して終わるところも好みでした。2021/09/20
泰然
29
東洋的民間伝承、様々な人種の交差に、怪奇に謎解きにヒロインのロマンスと実に贅沢なファンタジーとして結末へ進む。彼岸と此岸の川、死に別れても離れない双子の絆、五常思想、人食い虎の伝説など日本人の感性は元より、欧米人のオリエンタル興味にも巧く訴えかける筆運びはズルいなと思ったが様々なエンタメ要素を英国東洋領ゴシックにまとめた著者の力量は見事。作中で『闇の奥』が一瞬登場する。本作は形こそ違うが同植民地時代の不安や妄想や奇怪さがもたらすものにもアプローチしており、原題の直訳『夜の虎』が暗喩する世界観を思慮させる。2021/07/01
星落秋風五丈原
26
指をおしつけられたヒロインと指を探す少年がやっと出会う。2021/06/23
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