内容説明
19歳で吉原に売られた実在の花魁・春駒の記した、1927年刊『春駒日記』の復刻版。前作『吉原花魁日記』では廓で綴っていた日記を、本書はその1年後に「廓での日々」を改めて書き綴った、もうひとつの記録。親友・千代駒からの手紙や当時の社会面を賑わせた新聞記事、婦人雑誌に寄せた脱出の顛末、光子の写真なども掲載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はじめさん
24
森光子が遺した、大正期の吉原を花魁という内部から観察した貴重な著作の二冊目。生活する本部屋には泊まりや長時間滞在の客を入れるが、回し部屋なるところで他の客も取る。ダブル、トリプルブッキング当たり前なのだ。田舎から商いで出てきて春駒さんを気に入り、何日も逗留する客や、二円で長時間滞在できる軍属ながら五円で4時間で切り上げるスマートな遊び方をする馴染みの軍人だったり。あの手この手で多く金せびろうとするやり手婆ァの商魂逞しい。最後の方で白蓮に助けを求めた端末。仲間由紀恵と壇蜜、そして表紙絵のこうの史代絵脳内補正2019/12/08
ぱちこ
11
春駒、こと森光子の花魁としての過酷な生活を綴った日記。 まずこの本を読んでびっくりしたのが文学性が非常に高かった事。この本は森光子にとって2作目だそうで、校正などは少しは他の方がしたのだろうけど、字が書けない野口英世の母親(確か丁度同じ時代)が英世に宛てた手紙を見た事があったので余計衝撃を受けました。それだけに家族のために、幾ばくかのお金で物のように扱われるこの時代の女性の悲しさを追体験しました。2015/11/22
しきぶ
8
「吉原花魁日記」第2弾。前作に比べて吉原への恨みつらみは抑え目に淡々とエピソードが書かれているまさに「日記」で、春駒さんはもしかして抗うことを諦めてしまったのかと思ったが、もちろんそうではない。目の前の生活だけをみると女の世界のドロドロあり、同胞たちとの女子トークありだが、春駒さんの胸の内にはこの世界の理不尽さに対する恨みや怒りがたぎっている。病院の様子は本当に酷くて読んでいて辛い。これが実話だなんて。脱出の行程は、結果が分かっているのにハラハラする。林真理子さんの「白蓮れんれん」を今更ながら読んでみた。2017/09/07
たけはる
7
『光明に芽ぐむ日』の続編のような作品。本作を読んで、改めて、著者のめざましい聡明さにこうべを垂れました。普通、自分が苦界の中でめちゃくちゃに傷つけられているときに、同輩の境遇や行く末を思いやり(相当キツい意見もバンバン暴露はしてますが)、政府や社会のあり方を真っ向から批判・思索し、闘おうなどとは思えない。本来自分のことだけで手一杯なはずです。やはり著者はすさまじく聡明で、強靭な女性だなあと思いました。2018/01/18
nchtakayama
6
公娼制度の始まりは鎌倉時代だという。江戸から明治に変わっても、人びとの常識はそう簡単に変わるはずないけれど、当たり前を考え直す哲学の方法を国が持っていれば人肉市場はもっと早く無くなっていたのではないか。結局は光子さんのような「目醒めた」個人が少しずつ増えていくのを待って、公娼制度が無くなったわけだが。この本は社会運動の貴重な記録だ。それと同時に、遊客について書かれた部分では、銀杏BOYZの『生きたい』を思い出す。花魁は悲しいが、遊廓に来る客も、悲しい。2022/01/21