内容説明
文政元年(1818年)、損料屋(江戸時代のレンタルショップ)巴屋の惣領息子・又十郎は17歳になってからも親から丁稚扱いをされていた。損料屋といえばいちばんの得意先は長屋。長屋から長屋への引っ越しなどではわざわざ家財道具は購入せずレンタルで済ますことが、上方ほどではないにせよ江戸でもそれなりにあった。最初の事件は巴屋の店の入っている長屋だった。大家にヘンな物音がする部屋があるので見てほしいと頼まれてついていくと、部屋の隅に見事な幽霊の姿。もともと霊感らしきものが強いとは自覚していたが、あまりに鮮明なそのお姿に又十郎は腰を抜かしてしまう。これが「事故物件」のなせる業なのか!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
真理そら
68
損料屋の「見える兄」と「聞こえる妹」は血のつながりはない。『つくもがみ』シリーズに似た設定だが巴屋は古道具屋を兼ねていないし付喪神も登場しない。頼りない元武士の父とどっしりとした母が今のところ存在感が薄いし事件が貸し出したモノと関係薄なので損料屋の特徴が生かし切れていないのが惜しいかも。「犬張り子」「菖蒲打ち」「朝顔」の三話とおまけの「天音の本音」だが、内容に関係なく三國さんは朝顔が好きなのかなあと思ったりもした。成仏できない原因を又十郎と天音の兄妹が見たり聞いたりして解決する話なので読後感はさわやか。2021/03/14
ぽろん
42
サクッと読了。幽霊が視える又十郎と残留思念を聞くことが出来る義妹の天音のコンビが何とも可愛いくて暖かい。怖い気持ちを抑えて人の役にたとうと頑張る姿が好ましいです。次巻も楽しみです。2021/05/27
のんちゃん
33
江戸文政期、両国橘町の損料屋巴屋の息子で今は、店の丁稚として働いている又十郎17歳は、自分が幽霊を見る事ができる能力がある事に気づく。そして親姉妹を落雷で亡くした天音10歳が巴屋で娘として育てられているが、この子は物に残った故人の想いを聞く事ができる。見える又十郎と聞こえる天音は二人で、依頼により、江戸の事故物件を解決していく。お初の作家さん。私はやっぱり時代小説は女流作家さんの方が合う。楽しみなシリーズが、また出来た。また読みたい本がたまる、どうしようf^_^;2021/04/12
ネムコ
25
幽霊が見える!とか、死者の残留思念が聞こえる!とか、よっぽどシリアスな心霊噺か⁉と思うでしょうが、そういうイメージは一度全部忘れてください。この本は、家族でやってる損料屋の息子・又十郎と、母親の親友の忘れ形見、新しく出来た血の繋がらない妹・天音が、気の良い大家さんの頼みで幽霊の心残りをおさめて成仏できるよう頑張るお話です。幽霊話というより人情話でした。正直、私には刺激が足りませんでしたが(笑)、ほのぼのした時代物です。2021/11/06
葵@晴読雨読
23
面白かった!鬼がみえる又十郎と、音がきこえる、血のつながらない妹天音。二人が幽霊たちの無念をはらしていく。二人が美味しそうに食事するシーンも好きです。2021/12/08