内容説明
徳川時代を代表する詩形は俳諧である。独立した文芸ジャンルに高められた俳諧が、松尾芭蕉という才能を得て、十七文字の中に小宇宙を創造するまで。
日本文学への深い愛情をこめて単独執筆した魅力あふれる通史。
序 近世の日本文学/俳諧の連歌の登場/松永貞徳と初期の俳諧/談林俳諧/蕉風への移行/松尾芭蕉/芭蕉の門人/仮名草子
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マウリツィウス
24
【ドナルド・キーンの『日本像』】オリエンタリズム批判性より発した日本=東洋視問題点を払拭させていく好著にして名著、古代ギリシャ/シェイクスピア合致論が三島由紀夫像に継承されるも日本伝統の様式美起源は中国ではなく史実記述、つまり神話共有性を日本文学が廃棄した形跡はなく、むしろ多神教ギリシャ像の調和を可能とした土壌がキーン氏を魅了していく。日本古来の様式と閉じた特殊空間性が覇権を総べることで開幕する「日本文学的西洋古典史」始まり。この著書の意図は「西洋古典文芸遺産の正統継承総覧性を告げる革新名著」と締め括る。2013/06/15
佐島楓
17
ようやく刊行されている分を全巻入手。英文を訳したものだが読みづらいところはまったくない。教科書的なところもない。ひとつの物語を読み進めているような印象。主に連歌登場、松永貞徳から芭蕉門下生までの俳諧の流れ、仮名草子までを取り上げている。俳句ひとつとってみても、貴族が主に詠んでいたものから口語体に崩したり遊びを加えたりと、時代によってアレンジがされていく様子が面白かった。今私たちが読んでいるベストセラーでも、いつかは古典になるのだろう。こうして生きているうちに、歴史に残るような本にたくさん出会っておきたい。2012/04/02
はなひ堂
2
松永貞徳一門と談林派の東西抗争(?)をまとめ上げ、俳諧を一つの宇宙に仕上げたラッパー、それが松尾芭蕉なんだという印象のみ得た。己の知識がなさ過ぎて唖然としています。2017/02/26
みんさね
2
芭蕉前後の連歌~俳諧の流れ、知らんかったわ。下手な歴史小説よりずっと面白いし、ためになる。2012/05/06
Naoto Ono
1
俳諧について学べた一冊。特に松尾芭蕉の凄さを認識をできた。奥の細道が、ただの紀行記+俳諧のようなものではなく、連歌の思想をくみ、文と俳諧が一体となったフィクションと知って、非常に呼んでみたくなった。2014/04/01