内容説明
この世で最も恐ろしいことは、自分が自分でなくなってしまうこと――。眠り病から回復
した母、異世界人と結婚した妹とともに、吹上町で穏やかな日々を送っていたミミ。だが
友人・美鈴が除霊に失敗し、少女の霊に体を乗っ取られてしまう。美鈴は自分の体を取り
戻せるのか? 少女の霊の目的は? 著者のライフワークが華開く、スリル満点の第二弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
305
吉本ばななは実に久しぶり。本書はファンタジー『吹上奇譚』の第2巻だが、この独特の語りの世界がそうだったと思い出す。ここでは生命も、セックスも愛も何もかも軽い。それらは、極論すれば母親が作るどんぶりとさえ等価だ。しかも、物語の中にはほとんど葛藤といったものが見られない。「あとがき」で、ばななさんは「これはもはや、小説というものではないものかもしれない」と言うのだが、コアなばななファンにはこれでも十分に通じるのかもしれないが、作家にはもはや通じなくてもいいという思いがあるのではないか。この人にはもともと⇒2024/03/03
mayu
58
死者に手向ける花束を作る墓守くん、除霊に失敗して少女の霊に体を乗っ取られた美鈴。この作品の死に近い世界の中で、眠り病から醒めた母が毎日作り続けるどんぶりからは、生をつなぐ、生きることへの煌めきが感じられた。「未来は無限。私にできることは、その日まで判断を信頼できるであろう自分を育てること」。ミミたちの今できることをして、真摯に生き抜こうとする姿勢を見習いたいと思った。2020/09/27
しばこ
16
オカルトチックでファンタジーな世界なのに、リアルで生々しくて、生きていることと死がとても身近にあることなんだと感じた。 そんな中でどっしりとしたどんぶりの存在感が良い。2020/09/21
橘 由芽
10
三話→一話→そしてこの二話というヘンな順序で読んでしまったが、とりあえず三部作完了。どんな作品にも賛否両論があるが、とりわけそれがはっきりと出てしまうような内容。著者自身が「これはもはや小説というものではないかもしれない」って言ってるし。私にはきっちり最後まで読んでみたいと思わせるものがありました。むしろこういうものを「小説」と呼ぶのではないかな、と。2023/06/17
なつみかん
7
あとがきに読むに、もはや独自のジャンルとしてやりたい放題とのこと。ほとんど、ばななさんでは読んでいないので、こんな風だったかと思ってしまいそうです。ともかく次へ!2024/02/15