内容説明
双子のミミとこだちは、何があっても互いの味方。交通事故で父を失い母が寝たきりになってから、二人で支え合いながら生きてきた。しかしある日、こだちが突然失踪してしまう。交通事故の原因、異世界人、屍人、夢見の才能、そしてこだちの行方……。故郷吹上町で明かされる真実が、ミミの生来の魅力を目覚めさせていく。唯一無二の哲学ホラー、開幕。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
83
不思議な空気感。舞台は謎めいた吹上という町。事故で死んだ父と眠り続ける母、風変わりな住人たち、時折漂う異世界の風。行方不明になったふたごの妹のこだちの行方を追うミミが主人公。彼女が様々な出会いを経て、やがて自分のよって立つ場所を見出し歩き始める。そんな物語はファンタジーの王道ともいえる。そう言えば、ばななさんの作品は、自分自身を捜す女性を繊細で透明な筆致で描いたものが多かったような。カバー絵の少女の強い眼差し。彼女はミミか、こだちか、あるいは…?物語は始まったばかり。ゆるゆる追いかけてまいりましょう。2022/06/02
三代目けんこと
36
初ばなな。春樹っぽいファンタジーで、不思議な感覚に魅せられる一冊です。続編へ。2020/11/02
Kei.ma
15
科学技術の進歩は、SFをより難解なものにし、ファンタジーはいっそう現実との差を縮めるのだろうか▼この作品は、主人公ミミが忽然と姿を消した二卵性双生児の妹こだちを探し、遂には眠り病に罹った母の精神を開放するというもの。異世界人との触れ合いや駆け引きが見どころだ▼人間界との異質さにこんがらがることも。そこで、作者はそんな読者のために「ここまでのまとめ」をしてくれているのだ▼あとがきで作者はいう。私がファンタジーを書くなんて、と。とんでもない、怖さをアイスの甘さが包んでいるようなとても優しい物語に思う。 2020/09/10
しばこ
11
文庫本となっていたので早速読んだ。 ホラー風味のファンタジーだけど、出てくる実際の事柄とが混ざり合っているので、架空の町での話だし登場人物も非現実的だけど、実はどこかにありそうな感じを上手く味あわせてくれた。主人公ミミの心情の表現が流石だと思いながら、第二話を楽しみにしている。2020/08/11
ヨシ
10
『異(星)人で意識を失った母親を救いに行った、双子の妹の帰りを待つ姉』が主人公の、吉本ばななさんらしい訳のわからないお話。主人公がぶつぶつと何かを言いながら、ダラダラと話が続いていく。その言葉が心の琴線に触れる人には、大きな救いになるだろう。作者さんがあとがきで、『私がファンタジーを書くなんて、世も末だなあと思う』と書いてあるのに衝撃をうけた。ばななさんのお話って、ほとんどファンタジーですよね。2021/07/28