内容説明
現代の魔女・南条英子の妖しい魅力を描く長編サスペンス。交通事故で夫を亡くした若く美しい未亡人に魅せられる男たち。作家・藤綱は、英子の夫の事故死に疑問を抱き、不可思議な事件の糸をたぐり寄せて、戦慄する。彼女のつつましやかな昼の素顔の下に隠されている魔性とは……。遠藤文学の異色作。<上下巻>
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぱんぺろ
11
悪女。わるくない響き。否、惹かれるものが少なくない。しかし本作の英子のような真打ちに出会ったことなどありません。ホンモノの悪女、一度目を見てお話ししたいものです。と、思い返せば若干・幾度かは『悪女』出会ったこともあったのかも知れません。しかし根がビビりなボクはその度ユウワクに乗らず生き過ごしてきたのかも知れません。背徳、といったお手軽? なあたりにそれは潜んでいて、あの枝に巻きついた一本の蛇のように常に瞳を輝かせこちらを伺っているのでしょう。作品構成に確信を得た遠藤の筆も実にノッているように感じマス!2016/08/03
kumako
5
社会的な生活をするために抑圧しているイドを発現させようとする英子は正に魔女!赤ちゃん返りしたいおじいちゃんの件はいいけどね…。藤綱たちがどう巻き込まれていくのか?英子の夫の死の真相は?下巻へ続きます。2019/06/10
寺内町亭小天狗
1
現代社会には、清楚で慎み深く上品そうな女性が居ます。表向きがそうであっても、彼女の隠された裏側には、魔性が存在する。男性はいたって単純な生き物で表も裏もほぼ同じであるが、女性は表の顔と裏の顔がまっこう異なる。主人公・南条英子は、そんな二面性を持つ恐ろしい女である。小説を読むに連れて、彼女に対して鳥肌が立つ。なんという怖い女なのか。貴方の周辺に居る女性は、どんな女性ですか?
tcmatsu
1
遠藤先生の作品としては、異質の部分に入りますが、底辺に流れるテーマが明確なので、違和感は感じませんでした。上巻は、後半への地ならしに重点をおいて物語が展開していき、南条英子の過去が少しずつ明らかになっていく途中で物語は中断します。下巻へのプロローグといったところでしょうか。
桜もち 太郎
1
恐ろしい。内容も怖いが、文章に引き込まれていく。さすが遠藤周作だ。2012/08/19