内容説明
兎田孝則は焦っていた。新妻が誘拐され、今にも殺されそうで、だから銃を持った。母子は怯えていた。眼前に銃を突き付けられ、自由を奪われ、さらに家族には秘密があった。連鎖は止まらない。ある男は夜空のオリオン座の神秘を語り、警察は特殊部隊SITを突入させる。軽やかに、鮮やかに。「白兎事件」は加速する。誰も知らない結末に向けて。驚きとスリルに満ちた、伊坂マジックの最先端!(解説・小島秀夫)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
589
一時期ハマった伊坂さんのひさびさ作品。いやぁ難かしかった。いつもならば軽妙な会話を楽しめるのだが、今作では残念ながらそれすらも凌駕する読みにくさだった。こちらが伊坂作品を楽しめる年齢を超えてしまったということか。2023/05/17
青乃108号
389
このところデビュー近辺の作品を何冊か読んできた伊坂作品はやっぱり面白かったが、この作家はもう駄目かもわからんね、と俺に思わせたあの「アイネクライネナハトムジーク」以降、7作目の作品になる。ちなみにすぐ前は「AX」(殺し屋シリーズ3作目)。それなりに数を読んではきたが別に伊坂マニアではない俺は本作で大活躍する黒澤に特に思い入れがある訳でもないが確か「ラッシュライフ」に出てたかな、他にも出ていた気もするが敢えて調べる気はない。それはともあれ異色の、面白い取り組みの小説だった。「レ・ミゼラブル」を読みたくなる。2025/11/26
bunmei
306
数時間の『人質立てこもり事件』が題材。展開も各登場人物の視点によって刻々と変わる中で、時間を遡って事件に至るまでの経緯や人間関係等、前半は多くの伏線を散りばめている。そして、後半への期待を高めて結末へと導く。完全に行き詰った犯人が「いったい、この先どうなるのか?」という不安を煽りながら、最後は、見事にスカッと回収していくあたりは、伊坂作品の真骨頂とも言える。また、オリオン座の神話説、事件経過を繋ぐナレーション、『因幡の白兎』や『レ・ミゼラブル』の引用等を絡めたユーモアのセンスも忘れていないのも嬉しい。2020/11/13
五右衛門
287
読了。当然のことながら新品買いました。ネット購入なのでうちわしおり貰えませんでしたが。相変わらず冴え渡っていました。黒澤。ですよねー!!!今回の作品はいつもより丁寧に少し時間を戻そうとか読み手を騙そうとか混乱させてやるぞ等の思惑が無くしっかり作者に付いて行けました。けれども謎解き回答編では仰け反って天を仰ぎました。冬ならばオリオン座がみえたかもですが。そこなんですよね。伊坂作品の真骨頂は!兎田の皮が剥がされたのを綿(神話では蒲の花)で癒すのかな。この作品は近々再読候補です。それに泥棒探偵続編希望です。2020/07/01
こーた
252
オリオン座に因幡の白兎、そして『レ・ミゼラブル』。ひさしぶりに読む伊坂幸太郎は、夜空に煌めくベテルギウスのように、この小説でもあいかわらずの光を放っていて、そのかわらないということが、ぼくにはうれしくもある一方で、まだこんなこと書いてるのかおれは騙されねーぞ、と身構えるも237頁でがらっと物語が反転して、今度もまんまと騙されてしまったのである。黒澤たちと再会できたのもよかった。軽妙な会話が愉しくて、展開だとか伏線だとか、畳むとかそんなことはどうでもいいから、その遣りとりだけをもっとずっと読んでいたかった。2021/10/27
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