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内容説明
在野のエコノミストとして、また悲劇の宰相として名高い石橋湛山の原点と真骨頂は言論人としての存在にある。即ち一九一〇年以降の政府・軍部にみられる武断政治、対外膨張政策に真向から対峙して「小日本主義」を掲げ、ラディカルな大正デモクラシーの論客として軍国主義批判を貫いた。新資料を踏まえて言論人湛山の思想を検討するとともに、戦後、日中貿易再開、脱冷戦の思想を説いた政治家の顔を照射して巨人の全貌を明示する。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
107
石橋湛山の評論などはいくつか読んだことがあるのですが、本当に昔から揺らぎのない一本芯の通った考え方で生涯を貫いたという感じがします。小日本主義ということで植民地を持たないという考え方は、当時として主張するのは大変であったと思います。また晩年の時には政権を任せられるものの、病に倒れてしまって全うできなかったということはその後の日本にはどうだったのか。湛山については本当によく知っている人が書いただけあって伝記としては最高水準のものだと思います。2016/01/24
ステビア
30
こんな筋金入りの合理主義者・個人主義者・自由主義者・プラグマティストが日本にいたなんて。2023/10/27
masabi
8
【概要】戦前はジャーナリストとして、戦後は政治家として活躍した石橋湛山の評伝。【感想】自由主義、小日本主義、国際協調が行動指針であり、時期を問わず一貫している。戦後政界に進出した後も自身の信念に従い実践したあたり凄みを感じた。対峙する相手がGHQ、吉田茂、岸信介と大物にも退かず、遂に総理大臣にまで登り詰めるが大病により勇退する。早期に日米中ソ平和同盟を構想するなど独自の視点を持ち、その実現に奔走する。冷戦に囚われない異色の政治家だった。 2021/07/25
Tomozuki Kibe
3
言論人に始まり経済評論家・政治家の生涯をおくった自由主義者。「個人主義は、一切の行為を自覚」することとし、間接的に日蓮宗の僧の家に生まれ、クラークやデューイの孫弟子としてプラグマティズム・アメリカの民主主義に親しんだ。明治の時代に吉野作造を超えて「国民主権」を唱え、実利の方面から「植民地放棄」を唱え自由主義・個人主義・合理主義・現実主義・実利主義・民主主義のもとに軍部の暴走とそれを止めるどころが煽ったマスコミを非難した。だが、これらは当時には全く見変えられることはなかった。2023/05/04
Yoshio
3
独立不羈、信念の人という言葉が似合う、戦前戦中に堂々と植民地放棄など謳ったジャーナリスト。我が命顧みずさすが日蓮宗。石原莞爾も方向は真反対だが似たものを感じる。 こういうリアリスティックなリベラリストは現代にでてこないものか… 戦後は政治家に転身したが、占領軍に楯突いたあたりがクラィマックスかなぁ。その後はやや理念先行で人を動かす政治力が足らなかった印象。吉田茂との対比、その後袂を分かつところなど。2017/10/23