内容説明
SFマガジンに掲載された「宇宙ラーメン重油味」「たのしい超監視社会」をはじめとした、『横浜駅SF』で話題の、SF界若手最注目の奇才による初短篇集。全六篇収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ソルティ
236
SF短編集。この作者さん博識でめっちゃ化学だし各話の主人公オタク的思考笑。でも人間的な感情もちゃんと見える。宇宙ラーメンなんて出来上がったラーメンおよそ食い物っぽくないのにうまそうだし店主キタカタの姿勢と助手ロボットマルチャンの物言いがいい!表題作もじんわりあたたかい話。長編も読む!「「ねえ、叔父さん。ぼくも、兄弟がいれば良かったのにって、思うんです」(略)「ひとりだと、なにかの間違いかもしれないじゃないですか。ふたりいれば、自分が生まれてきてよかったんだと思えます。ここにいていいんだって、思えます」」2023/07/27
おかむー
97
なるほど名前は聞いていた『横浜駅SF』の著者さんか、今回初読み。『よくできました』。デビュー前の作品から雑誌掲載作、書き下ろし作品まで織り交ぜての6篇からなるSF短編集。設定やギミックはちゃんとしたSFながら、登場人物に共通の飄々とした人物像に表紙のあらゐけいいちイラストも相まって肩に力が入らないユルめの作風。それぞれの物語も衝撃の展開や劇的な結末ではなく、どちらかといえば「この前にも話があり、この後も物語は続く」といった長い物語のなかの1章を切り取った印象。2020/04/11
藤月はな(灯れ松明の火)
93
『ガイコツ書店員 本田さん』で著名だけ、知っていた作家の作品、お初。「楽しい超監視社会」はディストピアものとして固定化されたイメージを剥ぎ取る事で逆に社会がこの作品のようになりつつある事を示唆した。「消化器官があるならば、どんな拉麺でも食わせるッ!」な「宇宙ラーメン重油味」も「化学調味料ゴーレム」並の題名のインパクトとキャラのコミカルさに笑みが止まりません。拉麺に関しては頑固一徹な元・恐怖の殺戮マシンのジローさん登場はインパクトが大きい。同時に社会変化に翻弄される飲食業の悲哀とガッツを描く、賛歌とも言える2020/04/05
いたろう
82
著者初読み。6編のSF短編集。小惑星にあって、様々な形態の宇宙人にあったラーメンを提供するラーメン屋の話「宇宙ラーメン重油味」がおかしい。「たのしい超監視社会」は、オーウェルの「1984年」の世界から35年後の2019年が舞台。オセアニア、ユーラシア、イースタシアの超大国3国のうち、本作の舞台となるイースタシアは、現実に監視社会となっている現在の中国、思想教育がされている北朝鮮、第2次大戦中の日本を合わせたような国で、実際ににありえそうで怖い。表紙画に、各短編の登場人物たちが描かれているのは楽しいところ。2020/11/28
よっち
54
凍土となってしまった世界を描く「冬の時代」人間が人間を管理する進化型ディストピア「たのしい超監視社会」複雑な境遇だった姉の子との共同生活「人間の話」、陽系外縁部で人間の店主が営業する“消化管があるやつは全員客"「宇宙ラーメン重油味」誕生日に部屋に突然岩が出現する「記念日」透明人間の日々を描く「No reaction」と6つのSF短編集でしたが、どこか掴みどころのない淡々と描かれるストーリーはじわじわ来る感じで印象に残りました。読み終わった後に見て気づいたんですが、表紙の絵は登場人物だったんですね(今更感)2020/04/04