内容説明
『IT』『シャイニング』で知られるモダン・ホラーの巨匠キングが、小説への愛をこめた渾身のミステリー!
キング初のミステリー『ミスター・メルセデス』の続編登場。
少年ピートが川岸で掘り出したのは札束と大量のノートの入ったトランクだった。父が暴走車によって障害を負ったピートの家では、毎晩のように両親がお金をめぐって喧嘩をしていた。このお金があれば家族は幸せになれるに違いない……。
だが、その金は冷酷な犯罪者モリスが、隠遁の大作家ロススティーンの家を襲って奪ったものだった。モリスはロススティーンの小説に執着を抱いていた。だから大事なのはノートの方――そこには巨匠の未発表の文章が大量に記されていたのだ。しかし別件で逮捕されたモリスは獄中に。ついに出所したモリスは、隠しておいた「宝」を取り戻しに川へ向かったが……。
少年に迫る犯罪者の魔手。そこに助けの手をのばしたのは、探偵事務所をたちあげた退職刑事ホッジズと仲間たちだった。
※この電子書籍は2017年9月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
茜
94
「ミスター・メルセデス」の続編であり三部作の二部目です。犯罪者モリスの過去と少年ピートの現在が交互に進んで行くストーリー。やがて過去は現在に追いつく。そしてそこにミスター・メルセデス事件後にファインダーズ・キーパーズ探偵社を設立したホッジズとホリーも登場。主要人物達が出揃ったところで上巻は終了し下巻へと向かいます。ホリーの几帳面な仕事ぶりはミスター・メルセデス登場時には考えられないくらい成長していて頼もしい限りだった。ノートに書かれた未発表の文章達の今後の行方も気掛かりです。2021/09/30
nuit@積読消化中
76
キングがまた読書好きの私たちの心をくすぐる作品を書いてくれているではないか!上巻は大きな展開がなくとも、キングならではの細かい描写でぐっと物語に引き込まれた。本好きなら、犯罪者モリスや、少年ピートの考えや行動が我ことのようにドキドキしながら読めてしまうところもあったり…。あ、同じ本好きでもドルーはダメだわ。そして、ようやくお待ちかねの私立探偵ビル・ホッジズが華麗に(?)登場して下巻でどんな絡みを見せるのかが楽しみ。2020/11/14
HANA
68
引退した作家の家に入った強盗、その目的は未発表の原稿。だが紆余曲折の結果、奪った金と原稿は一人の少年の手に渡る事となった。キングの作品らしく上巻は静かな盛り上がりを見せるものの、特に大きな動きはなし。前作との繋がりは一部だけに留まり登場人物もほとんど登場しないが、中心となっている二人の人物、ピーターとモリスの動きから目が離せないのは、読書という魔に取り憑かれた人なら誰でもわかると思う。ピーターが原稿を売る決心をしモリスの出所でいよいよ盛り上がりを見せるという所で上巻は終わり。ここの引きも上手いな。2020/09/23
キムチ
61
がっぷり取り組む三部モノ。疲れるけど、その世界に身を鎮められる快感が!ブレイディと共に、今作で殺された闇を持つ作家の亡霊が漂う(やはり・・)メルセデス事件が起きた地域が狭いだけに、関係者の心に沈む想いが色々な場面でプリズムの様に光彩を見せる。三つの凄惨な出来事、捜査、裁判迄も併行して走るのにぶれるどころか先鋭さを増していく筆は圧巻(追随する方は脳がメタメタ)探偵社の3人のチームワークが通奏低音の様に流れており心地よい。ホーリーの成長と思いがけない才能がキラッと光り始める。極悪モリスVS少年の対決に頁が走る2021/08/15
Sakie
15
キングが社会問題を背景に入れ込むようになったのはいつ頃だったか。経済破綻や再び描写された無差別犯罪によって窮地に置かれた罪なき人々。格差を背景に、人々はより金銭にがめつくなり、主人公の家では<うちの一家はどんづまり>が頻繁に上演される。今回被害者を作家としたのはキングの企みだ。キングが教師として教えていた頃のことや「書くことについて」を彷彿とする。物語をつくりあげるものの『見た目はオートミールそっくり』ににやり。ホッジズ&ホリーの出番は終盤にちょっぴり。前作のキャラをあらかた忘れてしまっている自分が残念。2022/06/12