内容説明
生まれ育った故郷を抜け出したいと願ったふたりの少女がいた――エレナは街を出るが、恋の果てに帰ってくる。一方リラは、故郷で実業家として成功するが。ニューヨーク・タイムズ紙やタイム誌の年間ベストに選出。世界中の読書家を虜にした四部作、ついに完結
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
原玉幸子
22
人生には濃淡があり、或る時は鮮烈に或る時は意識もせずに時間が経過していく。そして、その鮮烈さには経験や知見が凝縮された深いものも逆に薄いもあるのは、まるで縦波と横波の複合で構成されているのに似ている気がします。薄くても数多くの鮮烈さがある幼少期から、いい感じに混じりあった青年・壮年期を経て、やがて鮮烈さは失われてしまっても深い思い出に絡め捕られる老齢期に。長編小説ならではの感情移入が、彼女達を取り巻く、田舎、貧困、暴力、性愛、癒着……それらが、人生はそういうものだと感じさせてくれます。(◎2021年・冬)2021/12/26
jamko
18
ついに最終巻読了!!!読み終わるのが寂しい、と思う間もないほどに最終巻も波乱に満ちて濃密だった。何よりもまず、貧しい団地で生まれ育った二人の少女が共に成長し、それぞれの道を選び、時に離れ、時にまた歩み寄って生き抜く物語を、彼女たちの老年期まで描ききった素晴らしさ。こういう物語を読みたかったんだ、ということに気付かされた。単純に女の友情の物語が読みたい、というのもある。と同時に、二人の女性の異なる人生が描かれることで降りかかる女性問題がより多岐に渡るのも読み応えがあった。→2020/01/26
ソングライン
17
二人の子供と夫を残し、幼い頃からあこがれた男性ニーノと不倫関係を選んでしまうレヌー。ナポリに留まり、エンツォと共にコンピュータ―会社を立ち上げ、成功させ、新しいナポリと造ろうとするリナ。二人は同時期に女の子を授かり、幸せをつかんだに見えますが、タイトルの表す突然の悲劇がリナを襲います。やがて、老年期を迎え、お互いの声が届きにくくなっても、一生離れることのない二人の強い絆が胸を打ちます。貧困、不条理、暴力が常在するナポリで未来の成功を夢見て、生き抜いた二人の女の子の物語、ついに完結です。2020/05/25
uniemo
16
三巻の終わりが波乱に満ちていたので楽しみにしていたシリーズの完結巻。二人の女性の幼少期からの物語がとうとう私の年齢も超えて老年期まできました。とても濃密な人間関係とアグレッシブな生き方は自分の生き方と共通点はないのですが、ある程度年を経た女性なら仕事や恋愛、家庭生活、子供との関係など、彼女たちの感情に共鳴できる部分があると思います。物語の最初に無くした人形は最後まで意味のあることがこの巻でわかりました。これで二人の物語が終わりかと思うと寂しいです。2020/01/20
chang_ume
9
イタリア(ナポリ)の戦後史・家族史を追体験したのだろうと思う。数多くの登場人物ですが、彼らを私たちは忘れることなく、ひとりひとりの半生を雄弁に語りたくなる(ソラーラ兄弟、そして老いたニーノが好きです)。実は徹底的な自己弁護に終始している語り手エレナの視点を相対化しながら読み直すと、また複眼的な読みが可能かもしれない。たとえばリラの視点こそ、物語外部に通じる私たち読者に近いのではとか。彼女からの「贈り物」は語り手の呪縛をこそ解放したのかも。私たちは折にふれてこの物語を参照し直すのでしょう。訳者にも感謝。2021/03/13