内容説明
1981年に文庫化されて池波正太郎の“もっとも愛着のふかい”長篇小説!
以来、46刷まで重ねている池波正太郎のロングセラーが新装版に。
幕末の京都で、麗しき剣士が刃をふるう!
杉虎之助は微禄ながら旗本の嫡男。生来の病弱に加えて義母にうとまれ、そんな我が身を儚んで十三歳のとき大川に身を投げるが、謎の剣士・池本茂兵衛に助けられた。この日が波瀾の人生の第一歩だった。
密偵の女、礼子と再会した虎之助は、やがて師の願いを受け、夫婦となり――。
幕末から明治へ、数奇な運命を辿った直参の剣士の生涯を描きつつ維新史の断面を見事に剔る異色の長編小説。
※この電子書籍は1981年に文藝春秋より刊行された文庫版を、新装版として刊行したものを底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
59
「杉虎之助」にとってかけがえのない人が相次いでこの世を去った。予想だにしなかった経緯。悔やみきれない思いを胸に失意から敵討ちへと先を見据える。幕府の威も地に落ち始め、薩摩や長州の動きも活発になる。京は戦火にのまれ、江戸の町ですら戦々恐々の有り様。幕末の勇士達の名がちらほら出て来て虎之助がどの様に絡むのか次巻での完結が楽しみである。2020/01/25
優希
52
激動の時代の中、虎之助は2人も大切な人を失うのが切なかったです、愛する妻と父親と慕う恩師の死から、仇討ちを決意する。虎之助の行末は何処に着地するのでしょう。2023/02/26
タツ フカガワ
30
虎之助は大切な人をふたり失う。ひとりは妻となった礼子、もうひとりは育ての親でもあった恩師茂兵衛。ともに薩摩藩士によって殺されたようで、虎之助は京でふたりの仇を探し始める。殺伐として剣呑な京の町を舞台に、思わず笑いが漏れるキャラクターが、かつて虎之助が江戸で一度だけ肌を合わせたお秀(法秀尼)。池波さんの作品にはお秀のような肉感的で大胆、磊落な女性がよく出てくるけれど、これは池波さんのタイプなのかしらん、と余計なことを想像しながら完結編へ。2021/05/02
ぶんぶん
17
【図書館】いよいよ、きな臭くなって来た。 愛する「礼子」もあっけなく死んでしまった。 もう少し愛の余韻があっても良いかと思うが。 そんな中、寺田屋事件が起こり、中村半次郎、西郷吉之助が暗躍、大きく時代が変わっていく中で、虎之助はどう生きるか悩む。 その中で、遂に池本茂兵衛も再会できたというに死んでしまった。 時代はそんな虎之助に構わず大きなうねりを起こし進んで行く。 幕末を経て近代国家にますます混沌としていく。一時代を虎之助の人生と歩むように駆け抜ける物語はどうなっていくのだろうか。最終巻にいよいよ入る。2020/10/14
加納恭史
14
一巻に続き二巻を読む。京に上った虎之助は、師の池本が幕府の隠密であると知る。虎之助は伊庭八郎から幕府の講武所の師範を依頼されたが、池本はとんでもないことだと言う。「お前は、世の中が静かになるまで、礼子とふたり、かまえて外に出てはならぬ。お前が出歩くことはうるさくいわぬが・・礼子をひとり、家に残しておくことは決してならぬ。礼子に留守させらるてきは、必ずとなりの寺におあずけることだ」。しかし勤王と左幕の争いに巻き込まれて、虎之助は外出し礼子に留守を任せた時に襲撃された。礼子は亡くなり虎之助も狙われた。無念。2025/08/06