内容説明
入院中の父に中華そばを出前したい二人の子どもと、変わり者の大人たちが起こした奇跡(「四分間出前大作戦」)。マズメシ母に悩まされる女子高生と、おむすび屋の女性店主の愛情(「おむすび狂詩曲」)。底なし大食い男の葛藤と、デカ盛り定食を作り続ける頑固親父の秘めた過去(「闘え! マンプク食堂」)。熱々の美味しい料理と、それを取り巻く人間ドラマに食欲も涙腺も刺激される、5つの極上の物語。
目次
四分間出前大作戦
おむすび狂詩曲
闘え! マンプク食堂
或る洋食屋の一日
ロコ・モーション
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
396
美味しい料理は、もちろん登場するが、個人経営ならではの苦労もある。だけど、店主の店への愛情、愛着も感じる。店を切り盛りする人間ドラマを堪能できて面白く読めました。どの話にも出てくる店の常連になりたい。料理もどれも惹かれますが、シンプルイズベストでおむすびが食べてみたい。おにぎりでなくおむすびね。料理を通じて作る、そして、食べるということで幸せを感じるのが、最高の幸せなのかと思わされました。2020/06/05
しんたろー
246
行成さん2冊目。町の中華屋「ラーメン」、手作りの店「おむすび」、大衆食堂「から揚げ定食」、洋食屋「ドミグラスソース」、キッチンカー「ロコモコ丼」…5軒の飲食店を舞台にした「食と人情」の緩く繋がった連作短編集。著者なりの「食」への拘りが、作り手の主人公に反映されていて共感できた。是非とも食べてみたくなる美味しそうな描写が秀逸で、料理もののツボを心得た小説になっている。『名もなき世界~』のようなサプライズはないが、どこにでもいそうな人たちの心情と行動が素直に伝わってきて、少しウルっとしてホノボノと読める良作。2020/07/30
モルク
191
食にまつわる5つの短編集。どれもよかった!中華そば、おむすび、でか盛り、閉店する洋食屋、ロコモコと、どれも食べたくなるが、それ以上にほっこりし、美味しく喜んで食べてもらおうと頑張っている姿に感激する。中でも「闘え!まんぷく食堂」主人はある客を満腹に出来なかったことを悔やんでいた。そこには息子との思い出が…。そしてその客の「もうお腹いっぱい」の声が聞きたくてある定食を考案する。「おむすび狂詩曲」はマズメシ弁当を作る母に苦慮する高校生とおむすび屋の店主。お握りじゃなくおむすびがいい。私も私のはおむすびと言おう2021/03/11
おしゃべりメガネ
168
これはヤバい。とにかくお腹がずっとグーグー鳴りっぱなしです。タイトルどおり、あらゆる料理のメニューをテーマにした連作集で5つの話が書かれていますが、どの話もとにかく食欲が終始刺激されます。ただグルメな話だけではなく、そこに極上の人間ドラマも重ねてくるので、それはもうとにかく素晴らしい作品でした。「中華そば」「おむすび」今でいうメガ盛りの「定食」「ドミグラスソース」「ロコモコ」とどれも食べたくなるコト間違いなしです。個人的には「おむすび」の話が一番好きかな。「ロコモコ」の話も元気をもらえるステキな話でした。2021/07/05
みっちゃん
161
小さな店ではあるけれど、手間を惜しまず、長年かけて培われた熟練の技が作り出す極上のメニュー。口にしたひとたちに元気と笑顔を与える。「ご馳走さま。美味しかったです」その言葉が今度はもう決して若くない料理人たちにもうひとふんばり、の勇気を授ける。大事な存在を失ってなお、生きなければならない悲しさと、それでもひとと触れ合う喜びが遺憾なく描かれていて、これが私の涙腺を緩ませる。2022/08/22