内容説明
充たされぬ魂の行き先は、破滅か、新天地か?
芸術家たちの理想郷「唯腕村」を舞台に繰り広げられる、絶望郷のごとき愛憎劇!
唯腕村理事長の息子、高浪東一は、父の死をきっかけに、村の理事長となる。女を強烈に求め、利益を増やすことに執着する東一は、危険なビジネスに手を染め、マヤとも愛人契約を結ぶ。だが、心の渇きは癒されず、あるまじき手段で関係を断ち切ってしまう。十年の後、都会の片隅に沈んだマヤは、憎むべき東一の成功を知る。再会した二人を待ち受けるのは、破滅か、それとも――。性愛の暗部を容赦なく抉った衝撃作!
解説・原武史
※この電子書籍は2011年2月に文藝春秋より刊行された単行本の文庫版(下)を底本としています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
319
何があったの?と気になる部分が、丸々時間が飛んでウヤムヤになっており、第二部での各人物の関係性が、やっつけに感じてしまった。一部のラストで真矢が売られて、二部で復讐劇の開幕…とはならなかったが、この展開も嫌いではない。というよりも、真矢の方もなかなか図太い神経しており、一概に被害者とは言えなくないか?と思ってしまうのはダメなことなのだろうか。変に善悪に綺麗すぎることない視線がとてもバランス良く、だからこそ、ラストで二人が打ち解ける場面も納得感があるのだろう。2020/08/31
k5
70
解説を読んで大本教に触れてあったので、なるほど高橋和巳の『邪宗門』の千葉がクズだったらこういう話になるかもな、と思いました。東一は後半、クズさが突き抜けてミーチャ・カラマーゾフみたいなことを言い出してますね。2020/10/02
ito
66
想定していたダークでグロテスクな気分になることはなかった。むしろ少しほっとした。互いに憎み合う壮絶な愛憎劇は、良い意味で裏切られた。不器用で社会の下層で懸命に生きることしかできない二人が、10年の歳月を経てたどり着いた境地は意外な感じがした。上巻で好きになれなかった東一だが、下巻では憎めない一面も見せる。対立しながらも、小さな共同体で支え合って生きる人々が最後にはいとしく思える。それにしても、高齢化や過疎化、食の安全、地方の経済事情などの問題を、閉鎖的な社会の群像劇で描ききる桐野さんを私は尊敬する。2014/05/25
キムチ27
39
男女の性愛を描いた…と言うのは納得しかねる。自然相手の事業管理、まして老若男女、他国籍。価値観の対立はもとより、本能のぶつかり合いがからまって、ボッシュ描くところの饗宴図のようだ。確かに、筆者の力をしてもまとまりがつかない感はなくもないが、読み手のたち位置で色々な宿題や手触りを掴み取らせたかったのやも…と感じたが。でも、軽い読後疲れが。2015/02/19
りょうこ
38
一気読み!もっとドロドロ展開を期待しちゃったが、普通に面白かった!こりゃ続編で次の展開が欲しいな(笑)2014/02/12