光文社文庫<br> 禽獣(きんじゅう)の門

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光文社文庫
禽獣(きんじゅう)の門

  • 著者名:赤江瀑
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 光文社(2019/09発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784334742010

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内容説明

立花春睦(たちばなはるむつ)は能楽のシテ方S流家元の次男である。彼は能楽に奥深い美を見いだしながらも、虚無を感じていた。能の世界を離れデザイン関係の会社に勤めた春睦は、妻を連れて日本海の漁村を訪れる。そこで起こった衝撃的な出来事が、二人の関係に裂け目を生み出す(表題作)。巡りくる宿命、まとわりつく情念を描いた10作品を収録。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

HANA

63
赤江瀑作品の登場人物は、どのような形であれ普通にこざかしく生きるなら不必要な影を持っている。本書は情念編と銘打たれている通り、斯様な影が凝ったような、得も言われぬ情念に満ちた登場人物ばかりが登場。ある意味で最も赤江らしさに満ちたアンソロジーかもしれぬ。そして能、刺青、バレエ、ミロのヴィーナスといった数々のものがそれを増幅し、逃れなくなっているような…。収録作全てが気に入ったと言っても過言ではないけど、やはり「雪華葬刺し」に止めを刺すかなあ。肌の上に刺青を彫られていく描写が何とも生産でエロティクで美しい。2021/10/01

藤月はな(灯れ松明の火)

26
絡みつくような運命的な出会いと気だるい痛みと開花する淫蕩さが結びつく能や彫物、文楽、バレー、銃などの美の昇華が鮮やかな短編集。丹頂鶴や熱帯魚などの凶暴でいて艶めかしい生き物の描写も見事。艶めかしい表題作や彫師の業と彫物の痛みと合いまる快楽に憑りつかれた者の情念の悍ましい結末である「雪華葬刺し」、殺生を行ってきた一族を滅ぼした死者の思いが凝る銃で破滅した女を描く「卯月恋殺し」が印象的です。しかし、やっぱり、「ライオンの中庭」が好きです(←趣味がモロバレ・・・・)2012/07/25

ぐうぐう

17
『赤江瀑短編傑作選』の情念編。赤江瀑の小説は、官能的であるとか、禁忌的であるとか評されるが、そもそも官能的な描写や禁忌的な設定で読ませようと、作者自身はまるで思っていない。官能や禁忌は、赤江作品の中では、極々あたりまえに存在している。赤江はそこに、異様なアイテム(表題作で例えれば、丹頂鶴といった)で小説自体を貫くのだ。そうすることで、読んだことのない小説、想像したこともない世界、そんな常識を軽々と逸脱した幻惑的な物語が、今度は読者を貫いていく。(つづく)2013/05/21

bluemint

11
1970年頃に夢中になった作家。このところ、再評価が進んでいるらしくアンソロジーがよく出版されている。角を曲がり古びた門をくぐるとそこは戦前の光景が広がる。古典芸能や風俗の世界にいまだに息づく芸事に賭ける情念に身も心も焼き尽くされる。理解の入り口には立てるが、なかなかその世界には浸りきれない。血に塗れた極彩色の世界を前にただ茫然と佇むのみである。別の世界の出来事のようでいて、ちょっと心の向きが変わるとこちらにも侵食してくるようで目が離せず、人倫に反したエロスに捉えられ抜け出せなくなってしまう。2023/03/22

しろ

10
☆7 人の情念こそ最もミステリアスで耽美でどろどろと蕩けるように官能的。エロスも美も怒りも憎しみも何もかもが混じり合って、見てはならないものを見ているような背徳感がたまらない。美とそれに対する情念の前では他人なんて…と思わせる「シーボルトの洋燈」。性交を見られること見ることの魅力が引き起こした事件「ジュラ紀の彼」。受胎の官能「象の夜」。鉄砲の魅力にひきこまれた女の情念「卯月恋殺し」。他にも刺青、バレエ、人形、彫刻など、人の念と密接にかかわってくるガジェットでより官能的な素晴らしい短編ばかりだった。2012/09/20

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