内容説明
イナバの白兎、国引き、オロチ退治、海幸山幸、天の岩屋戸の話など、古事記は私たちにとって親しみ深い古典である。著者は、古事記伝の宣長という縦糸と、イギリス社会人類学の横糸とを交錯させる新しい問題意識に立って古事記を読み解くことにより、その本質を明らかにした。新しい光に照らし出された古事記の豊かな世界がここにある。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yamahiko
18
古事記を読むうえで避けられない名著だと思います。既にお亡くなりになっておられ、今では「権威」とみなされているようですが、本書からは、アプローチや文章から気負いなどが感じられ、そのことがかえって瑞々しく好感を持って読み進めることができました。2017/02/05
うえ
10
「シャーマンの目はきらきらと光っている点で常人とちがうことが、シベリヤのシャーマンの場合にも指摘されている。シャーマンは一種の千里眼で、闇のなかでも霊(スピリット)を視る力をもつ。その目に異様な光が宿るのもそのためである…一般に私たちは、シャーマンや巫女をいささか風俗化しすぎて眺めている嫌いがある…世襲であろうとなかろうと…狂女、すなわち神に憑かれた状態の女があらわれるのは、決定的なものを突如うしなったという魂の衝撃がきっかけになっている。職業的巫女の資格も、おのずからにして与えられるのではない」2018/05/24
モリータ
10
まだ読んでますが。序に書いてあるように、やはりテクストに即して読むのが大事だ、というのはわかりますが、もはや確かめようのない事柄=解釈についての断定的な書き方にはどうしても身構えてしまう。ある解釈・分析に、より説得力があるというのはわかりますが、ある一線を越えると史上たくさんあったであろう「これを一番正しく読めるのは自分だ」式の信用ならないものになってしまうので。まずは「古事記にそういうことが書かれているのだ」ということを手堅く確認しながら、警戒しすぎずに読めるものかどうか…。2016/01/19
クリ
6
西郷信綱先生は「古事記の世界」の「源泉」として、本居宣長著「古事記伝」をあげておられます。読みたい、です(私にはすっごく高い野望だー)。読書メーターが励みになり、予定より早く「古事記の世界」読み終わりました。ありがたいことです。2016/11/21
式
3
古事記の研究もフィールドワークによる対話であり、安楽椅子の上からの本質的な理解はできない。古事記伝を重視した解釈、レヴィ=ストロースの影響を受けた構造分析。古事記を歴史的な観点で捉えるのではなく、冬至の大嘗祭の説話化という観点で読み解く。これは非常に説得力があり、大嘗祭における隼人や賀茂氏の職掌と古事記における役割の関連などはとても面白かった。神武東征の原型が大嘗祭の地上的部分の国覓ぎの神話化という説も興味深い。ただ古事記を読むだけでは気づかない点や原型などを知ることができる良著。2021/05/16