内容説明
1993年。上海では改革・開放の嵐が吹き荒れ、急激な発展が続いていた。ストリートキッズ・チーム「紅」のリョウは、チームの中心的存在である少年。心を病んだ母親と二人で暮らしている。音楽の才能に恵まれたリョウは、かつてピアニストであった王詩祥という男のもとでレッスンを受ける一方、白虎という高名な武闘家の訓練所にも出入りしている。訓練所には「紅」と対立するチーム「鬼」のリーダー、鋭もいるのだが、ある日鋭とケンカになったリョウは、決着をつけるために……!?
感想・レビュー
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カナン
40
きらきらとしたものに触れたくて。この頃の花衣作品にはリズムがあった、詩があった。肋骨と肋骨の隙間、丁度その奥にある心臓を指の腹で圧されて擽られているような、膚が粟立つ様な粗削りな色香があった。殴って支配して傷つけて血を流して殺すのも愛。傷つけ愛も殺し愛も憎しみ愛もこの世にはあって、どうしようもない業を背負って我武者羅に足掻いている少年が、蛹から羽化する蝶のように聡明で狡猾で高潔な存在へと変貌していくその描写が好き。天才ピアニストでありながらマフィア「紅」のリーダーで、アサシンである少年のダーティーな未来。2021/07/30