内容説明
季節のうつろい、そして夫の病。「忙しくくたびれて」日記を付けられなかった二年間をはさんで、ふたたび丹念に綴られた最後の一年間。昭和四十四年七月から五十一年九月までの日記を収録。田村俊子賞受賞作。【全三巻】
〈巻末エッセイ〉武田 花
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mayumi
34
下巻で登場するのは猫のタマ。なんとも野性味溢れる猫で、モグラ、蛇、キジ(!)を捕らえては、飼い主に見せにくる。そんなタマの戦利品を片付けるのは百合子さん。まあ、繊細そうな夫では無理そうよね…。そして、その夫の病。少しずつ弱っていく夫に寄り添いつつ、日記は淡々と綴られる。時事としては、学生運動が盛んな時代。あと、全日空機と自衛隊機が衝突して、全日空機が空中分解してしまった事故。そんなことがあったとは知らなかった。2021/05/16
スイ
14
胸がいっぱい。 私もあの山荘で生きて、今はその記憶が私の中にあって、読む前と今の私とでは確実に違うだろうと思う。 時折のひやっとするところ(夫婦間のことであったり、他者や命に関してだったり)も含めて、よくこの日記を出版してくれた、と思う。 折に触れ、私は読み返すことだろう。2023/12/24
takakomama
8
昭和44年7月から昭和51年9月までの日記。出版するつもりではなかった日記なので、飾らない言葉で、ありのままの気持ちが綴られています。泰淳さんが病気になり、だんだん弱っていきます。家族の病気は、自分が病気になるよりもつらいと思います。武田泰淳さんと娘の花さんの巻末エッセイ、家の写真付。2023/12/29
Kerberos
5
下巻読了。泰淳の死が間近に迫っていることを悟った百合子は、夫を安心させようと入院予定の病室の快適さを枕もとで語りかける、その甲斐甲斐しさに胸打たれた。地下鉄車内で読んでいて周りの乗客に落涙を気付かれたかもしれない。『犬が星見た』を再読したくなった。今のロシアの状況を知ったら、武田夫妻は何を語ってくれるだろうか。別荘が近く親しく行き来していた大岡昇平の作品も読んでみたい。残り時間が足りそうにない。2022/11/18
Green
3
武田泰淳の病気してからが読んでいて「胸がつまる」 2022/07/20