内容説明
稀代の美女・喜遊。彼女は本当に実在したのか? 独自の観点で描く歴史小説。
開港したばかりの横浜。そこに江戸吉原を凌ぐ港崎遊郭が出来た。その象徴ともいえる壮麗な妓楼「岩亀楼(がんきろう)」に、喜遊という美しい遊女がいた。彼女は異人の客となり、汚される侮辱を拒み、自害。その事件は、誇り高い日本女性として伝えられ、いつしか彼女は、異人を排除する「尊皇攘夷派」の志士たちの心に燃える「倒幕の炎」の燭台となっていった。幕末に語りつがれた美女・喜遊の姿を描く歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
花林糖
10
(図書館本)横浜の港崎遊郭の岩亀楼に実在したとされている喜遊の物語。好みとしては喜遊に焦点を絞り、政治色薄めが良かった。ラッセル商会のアビエル・アボット・ローの様な嫌な人物は当時沢山居たんでしょうね。中居屋重兵衛の店「銅御殿」を見てみたい。2019/12/10
チョビ
5
【読メ遊廓部課題本】主人公の遊女が性格、行動パターンがステレオタイプで、作者が求めた2面性が埋もれてしまっている。男性側も架空の人物を実在の人物が凌駕しているという小説としてアリなのか、な演出である。あとがきに全て集約されるのだが、ここの人物が本当にいた人物なら既に神奈川県が調査しているはずだが、それが全く現れないのはまだ「ガセ」なところもあるはずだ。なんか、調べたくなったぞ! 著者の願望が色々つまった小説。2019/12/12
ハッピー
2
【図書館】ダ・ヴィンチの新刊情報で気になった初読みの作家さん.幕末の横浜に建てられた「港崎遊郭」の象徴ともいえる壮麗な妓楼「岩亀楼」のスターで一世を風靡した喜遊.吉原三千人の遊女の中にも,彼女ほどの美貌の持ち主はいなかった.人気前兆のまっただ中,彼女はアメリカ人に汚されることを拒み,武家女の作法で自決した.尊王攘夷派の政治プロパガンダとして利用された哀れな遊女だと決めつけた喜遊の物語に光をあてた1冊.2021/07/24
イズサンローラン
0
喜遊については実在するか否かという点から諸々見解があるが、こちらの作者は歴史的事実を徹底的に調べ上げたうえで、極力事実に近い形で描かれているのだと見て取れた。 ラブストーリーだけではなく、細かい歴史的背景を一つ一つ関連付けながら読むのが面白い。 ゆかりの地巡りをしたくなる。