内容説明
北国カーランディア。建国以来、土着の民で魔法の才をもつカーランド人と、征服民アアランド人が、なんとか平穏に暮らしてきた。だが、現王のカーランド人大虐殺により、見せかけの平和は消え去った。娘夫婦を殺され怒りに燃える大魔法使いが、平和の象徴である鐘を打ち砕き、鐘によって封じ込められていた闇の歌い手と魔物を解き放ったのだ。闇を再び封じることができるのは、人ならぬ者にしか歌うことのかなわぬ古の〈魔が歌〉のみ。『夜の写本師』の著者が、長年温めてきたテーマを圧倒的なスケールで描いた、日本ファンタジイの金字塔。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くたくた
42
何かに追われるようにして一気に読了。まだ1月だけど年ベス確定。鐘の残響に浸るような時間をしばし揺蕩う。乾石智子は書物の魔導師だろう。いきなり物語世界に引きずり込まれて、主人公と一緒に動乱と苦悩の中を引き回される。悲惨な民族浄化ともいえる虐殺の中にも、生活の喜びや出会いや愛があり、一方で憎しみの連鎖があり、思惑の交差があらゆる悲劇をもたらす。静かなイリアン。ロベランの無残。絶望の中でも諧謔味がある大魔導師デリン、老雪ツバメの老いらくの恋まで。この物語の後、平和で三民族が融和した国が出来るのだろうか。2025/01/24
小夜風
25
【所蔵】著者のオーリエラントシリーズ以外のものを初めて読みましたが、とっても壮大で上質なファンタジーでした。あまりにも壮大過ぎて意識がついていけるか不安になりましたが、最後の方はもう読みながら心が震えるようでした。虐殺や癒せない傷や悲しみもあるけれど、全てが再構築されていく様は清々しく心が洗われるようでした。辛い場面はついつい読み飛ばしそうになりましたが、一言一句も見逃したくなく意識してゆっくり読みました。この物語を書ける人が日本にいることがとても幸せなことに思えます。著者の本を読破したいなと思いました。2019/09/30
波璃子
14
乾石さんの作品の中だと「夜の写本師」と並んで好きかもしれない。他の作品より暗くて重たい内容なので時折気分が沈むときもあった。それだけリアルに描かれているということなのだと思う。何作もある海外のファンタジー映画を見たような重厚感。静かな感動が後に残る。2019/11/06
Masa
14
読了。やっぱりオーリエラントシリーズではないのであまり期待していなかったのですが、乾石さんの作品についてもうそんなこと思うのはやめます。めっちゃくちゃ面白かった。いままで読んできた作者の作品の中では一番かなと思いました。もうすごかったぞ。クライマックスとか胸が熱くなった。最後のさいごまで自分の中にも翠ヴァニ石入り込んだようで、読み終えたときにそれがすっと霧散したような感覚に浸りました。これは、良かったぞ。久々に帰国して本当に良かったです。2019/08/21
mako
12
壮大な時間の流れの中にこの物語はあり、伝承の歌がその時間をつないでいく。その縦軸とともに、日々の細やかなエピソードや暮らしぶり、景色の描写が心に残った。2024/12/09
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