内容説明
北国カーランディア。建国以来、土着の民で魔法の才をもつカーランド人と、征服民アアランド人が、なんとか平穏に暮らしてきた。だが、現王のカーランド人大虐殺により、見せかけの平和は消え去った。娘夫婦を殺され怒りに燃える大魔法使いが、平和の象徴である鐘を打ち砕き、鐘によって封じ込められていた闇の歌い手と魔物を解き放ったのだ。闇を再び封じることができるのは、人ならぬ者にしか歌うことのかなわぬ古の〈魔が歌〉のみ。『夜の写本師』の著者が、長年温めてきたテーマを圧倒的なスケールで描いた、日本ファンタジイの金字塔。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小夜風
25
【所蔵】著者のオーリエラントシリーズ以外のものを初めて読みましたが、とっても壮大で上質なファンタジーでした。あまりにも壮大過ぎて意識がついていけるか不安になりましたが、最後の方はもう読みながら心が震えるようでした。虐殺や癒せない傷や悲しみもあるけれど、全てが再構築されていく様は清々しく心が洗われるようでした。辛い場面はついつい読み飛ばしそうになりましたが、一言一句も見逃したくなく意識してゆっくり読みました。この物語を書ける人が日本にいることがとても幸せなことに思えます。著者の本を読破したいなと思いました。2019/09/30
Masa
14
読了。やっぱりオーリエラントシリーズではないのであまり期待していなかったのですが、乾石さんの作品についてもうそんなこと思うのはやめます。めっちゃくちゃ面白かった。いままで読んできた作者の作品の中では一番かなと思いました。もうすごかったぞ。クライマックスとか胸が熱くなった。最後のさいごまで自分の中にも翠ヴァニ石入り込んだようで、読み終えたときにそれがすっと霧散したような感覚に浸りました。これは、良かったぞ。久々に帰国して本当に良かったです。2019/08/21
波璃子
13
乾石さんの作品の中だと「夜の写本師」と並んで好きかもしれない。他の作品より暗くて重たい内容なので時折気分が沈むときもあった。それだけリアルに描かれているということなのだと思う。何作もある海外のファンタジー映画を見たような重厚感。静かな感動が後に残る。2019/11/06
Chikara Tonaki
9
乾石さんの作品では、「夜の写本師」に匹敵するくらいの面白さだったかも。 「結局はお伽話」と言うなかれ。『憎しみの連鎖を断ち切る魔法があったなら…』人類皆が夢見る話なのだから。2019/10/17
ゆうこ
8
ファンタジィと言えば現実にはあり得ない創作された世界のように思うが、この話は違う。魔法使いや闇の獣は出てくる。しかし、本来住んでいた人をその土地から武力で追い出し、その上に自分たちの帝国を作る。自分たちより優れたものは虐殺を行う。まるで現実世界ではないかと感じてしまう。この本の中で描かれているのは、裏切られたものの怒りと、それを許す人の心。なぜ鐘は「滅び」なのか。滅びた後に何が起こり「滅びの鐘」はどうなるのか。重いテーマを持ったファンタジィだと思います。色々考えさせられたいい本でした。2019/10/03