内容説明
男女の愛欲と孤独。野心と諦観。縦横無尽に張り巡らされた伏線の糸。平安貴族を熱中させた、極上華麗な大ベストセラー大河小説『源氏物語』五十四帖を、短編小説の名手・阿刀田高があなたのかわりに読みました。大人のユーモアとエロス溢れる軽妙な語り口で、70年以上にわたる長大なストーリーと複雑に絡み合う人間関係が、すんなり頭に入ります。学生からシニアまで全国民必携の一冊。 ※新潮文庫に掲載の挿画は、電子版には収録しておりません。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
130
阿刀田さんの文庫の最新刊です。源氏物語の入門書的位置づけで読めばいいのでしょう。結構挫折している人が多いのでこのような本の価値が出てくるのではないかと思われます。わたしも谷崎純一郎、橋本治、そのほかの現代語訳、自慢じゃありませんが途中挫折組です。この本はそのような人に向いているのですが、私のようなものにはこれで読んだ感じになってしまいます。まだ大学受験用の旺文社版の参考書のほうが読もうという気になります。2015/12/19
ベイス
102
阿刀田さんのこのシリーズは大概、原書を読んでみようと思わせる力があるのだが、自分には『源氏物語』を受け入れる素養や器量が著しく足りないからか、まったく食指が動かなかった。ここで源氏物語の価値を否定する勇気はわたしには無いが、内村鑑三が「この物語が我々日本人を意気地無しにした」とブッタ斬ったことに、わたしは勇気をもらうのである。2024/04/04
ジンベエ親分
59
源氏物語は何度かトライしてその度に挫折していたので、今回初めて全貌を知った。この話の難しいところは、登場人物がやたら多く、しかも名前が途中で変わること。親子や夫婦関係も入り乱れているので、人物相関がさっぱり掴めなかったのだ。それが本作の親切な解説のおかげでようやく分かった。まあ原文で読んでもその風雅を理解できるほどの古文読解力はないので、現代語訳で読むしかないのだが、もう一度トライしてみようか、と思わせる名解説。しかしやはり1000年残るだけの名作だったのだな~。ただの漁食記ではなかったのかぁ。2020/07/18
saga
58
学校教育のお陰で書名と著者を知らない人はいないだろう。しかし、この物語がこんなに奥深いものだとは知らなかった。源氏と言えばプレイボーイ……そんな印象しかなかった。美しい女性に心惹かれるのは男のサガ。当時のやんごとない女性は簾内にいて、その簾内に男が入ることは、例え肉体関係がなくとも契りを結ぶこととなる。確かに源氏は多くの女性と浮名を流したが、紫式部は源氏や彼の子孫に対して因果応報の結末を用意していた。女性の目線で、男の浮気に対して強烈なアンチテーゼを感じる作品だと思えた。2020/02/29
佐島楓
58
源氏は与謝野晶子訳しか読んでいない。本作は読みやすいダイジェストとなっている。現代の小説を読んでいる気分で楽しめ、ときどき著者のユーモアが混じるのも面白い。2016/07/14