内容説明
「母性のディストピア」という戦後アニメーションの想像力の袋小路に対し、押井守は情報論的転回で突破しようとした。しかし映像の20世紀からネットワークの21世紀へと時代が移行し、「母性のディストピア」の重力が増すなか、押井の挑戦もまた挫折した。戦後日本とアニメーションが見た夢の痕跡から、新時代を開く鍵は見つかるのか――富野由悠季との最新対談、語り下ろしの「2010年代の想像力」を追加収録した決定版
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
35
著者の身振りがいつも空回りにみえるのは、その射程が長すぎるから、だと思います。正確には、著者が思っているよりも実際は短く、振りかぶり力み倒しても、実際には遠くに行けない。でも、サブカル批評でそこまで遠くに行けなくても良いのではないかとも思います。本書を書く動機は、宮崎、富野、押井をひとつの本の中で書くのに不自然にならないようにということ以上ではないでしょう。それぞれ論としては十分な水準で充足して完結していています。巻末のインタビューの語りの方がサブカル論と同期しており、著者の等身大だなと好感を持ちます。2021/11/27
鼠∞
21
押井守を履修しリベンジ。でも観られる映像作品がなかなか無くて苦労した。これで宮崎駿、富野由悠季、押井守が描こうとして失敗したものの正体を朧げながら掴むことができた。しれっと庵野秀明についても触れられていたので上巻よりも読みやすかった。とりあえず、「要するに日本は終わってる」という絶望的な論調の本書。書かれた後に杜撰なコロナ対策と五輪強行開催という更に絶望的な事態が起きている。宇野氏が今後社会批評の本を書いたとして、読んだところで冷笑的かつ暗い気持ちにしかならないのは目に見えてる。次作以降読むかどうか迷う。2021/08/11
鼠∞
21
やっぱどうも太刀打ちできなかった。批評用語連発は仕方ないにしても、扱ってるアニメ作品をほぼ全部観てないから、少なくとも8〜9割観てる前提での語り口である本書にはついていけなかった。全ッ然興味ないトピックで盛り上がる飲み会の居辛さわかる?もう、まさにアレだから心が折れた。もう少しアニヲタ化してから再挑戦しようと思う。2019/08/30
Hiroo Shimoda
11
我々は成熟できるのだろうか。箱庭の中で世界に繋がる夢を見続けるのか。匿名で石を投げる行為はまさに肥大した母性と矮小な父性の噴出なのか。2019/11/30
鳩羽
8
成長・成熟を目指しきることもできず、母性のディストピアという袋小路に陥る戦後アニメーション。情報論的展開でそこから抜け出そうとした押井守を紹介しつつも、映像の世紀からネットワークの世紀へと時代は移り、母性の粘度は高まるばかりで、虚構は現実に時代の糧となる想像力を提示できない。ディストピアの未来を捉えていたという意味で優れたアニメ作品だったのでは。これからの未来を想像するのに従来のアニメでは無理かもしれないが、むしろ人間自身がアトムの命題を背負うようになり、自らに重ねやすくなるかもしれない。2019/08/10
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