内容説明
小笠原群島の南方に位置する硫黄島。日本帝国が膨張するなか、無人島だったこの地も一九世紀末に領有され、入植・開発が進み、三〇年ほどで千人規模の人口を有するようになった。だが、一九四五年に日米両軍の凄惨な戦いの場となり、その後は米軍、続いて海上自衛隊の管理下に置かれた。冷戦終結後の今なお島民たちは、帰島できずにいる。時の国策のしわ寄せを受けた島をアジア太平洋の近現代史に位置づけ、描きだす。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
43
これはすごい。カバーのすり鉢山星条旗に騙されてはいけない。硫黄島にかつて生活者がいて、戦争による疎開と徴用を受け、戦死し、あるいは日本で困窮し、施政権が日本に戻った後に帰島を望んでも未だかなわない。圧倒的に多い「硫黄島の戦い」に関する作品(映画も含む)に対し、「硫黄島の人たち」にきちんと焦点を当てた、ページ数をはるかに超えた労作だ。コカの栽培と海軍を通じた密売とか、プランテーションと呼ぶしかない農業経営とか、でも土壌と気候に恵まれ、食べていくことができた島。そこを奪われ、不作為の作為で時間切れを狙う政府。2019/01/31
おかむら
29
硫黄島というと、イーストウッドの映画で描かれた(もちろん観たとも)戦闘の島、火山帯のゴツゴツした不毛の地なイメージでしたが、戦前はそこに1000人以上の島民が暮らしてた! 明治時代の入植から始まる島の生活史に焦点を当てたこの本、戦後はアメリカ軍が返還後は自衛隊が駐屯してて一般人は住めないまま。まさに「国策に翻弄されまくった」島民たちの歴史。読み応えあり! ちょろっと出てくるアホウドリの撲殺とかコカの栽培とかの日本の南洋開発の闇部分も面白そうだなー。あと父島の先住民(欧米系)とかも!2019/03/08
Our Homeisland
27
ぜひ、できるだけ多くの人に読んで欲しいと強く思います。素晴らしい作品でした。私や硫黄島関係者がいつも言っている「激戦の島としではなく、戦前に豊かな生活があった島だということを多くの人に知ってもらい長く伝えていきたい。」という姿勢、方向と、完全に一致したアプローチで書かれていました。母が戦前硫黄島出身で親戚も何人か軍属として残らされて犠牲になっています。この本に出てくる一人は母の従兄弟で伊豆下田で民宿硫黄島をやっていたこともあってよく知っています。(感想を続けます。)2019/06/14
鯖
26
硫黄島の歴史をかつて島民だった方への丹念な取材を通して描いた本。明治期に移民先として開発され、砂糖やコカイン等の農場で奴隷のように働かされ、太平洋戦争の折には103人の島民が「偽徴用」され93人が地上戦で亡くなった。戦後は火山島という理由で帰島を願う島民たちの思いは無視され、那須等の移民先ではまたもや貧困と差別に苦しめられる。空襲で避難し、帰宅すると日本軍によって鶏から米からカボチャから食料は根こそぎ奪われていたという話がしんどい。2019/04/21
terve
20
硫黄島は人の住めない島。という思い込みは戦後しか知らないからであり、戦前はそこに豊かな生活があった。その記憶を留めたのが本書であり、それこそこの本の魅力だと思います。ともすれば忘れがちな、生活の営みがありそこには歴史の表舞台には出てこない人たちが確かにいたことを教えてくれます。2019/07/17
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