内容説明
御者の息子ダイヤモンドは,美しい女性の姿をした北風に抱かれ,夜のロンドンの空や,嵐の海をかけめぐる.そして北風のうしろにある不思議な世界へ.もどってきた幼い少年は,そこで聞いた楽しい川の歌を口ずさみながら,貧しい暮らしにあえぐ家族や友人を助け励まし続けるのだった.イギリスファンタジーの名作を新訳で.
目次
目 次
第20章 ダイヤモンド、読み方を学ぶ
第21章 サルばあさんちのナニー
第22章 レイモンドさんのなぞなぞ
第23章 早起き鳥
第24章 もう一羽の早起き鳥
第25章 ダイヤモンドの夢
第26章 ダイヤモンドの道案内
第27章 小児病院
第28章 ヒノヒカリ姫
第29章 ルビー
第30章 ナニーの夢
第31章 北風が吹きつける
第32章 ダイヤモンドじいさんとルビー
第33章 明るい見通し
第34章 田舎で
第35章 私がダイヤモンドと知り合った次第
第36章 ダイヤモンドが北風にたずねたこと
第37章 もう一度
第38章 北風のうしろの国で
訳者あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
66
ダイヤモンドは家族のために働き、友達のナニーやジムのために心を砕き、そして歌う。しかし彼らのダイヤモンドに対する評価は、頭のタイルが一枚はがれた神様の赤ちゃん。一人でブナの木の巣で過ごす姿は少し寂しそうだ。「北風の後ろの国に行ってきたこども」とは、天国(善に満ちている場所?)を知っているという意味なのだろうか。ある日久しぶりに北風がやってくる。「どんなものにでも魂が宿っていてそれがなくなったら、何の意味もなくなるし、ちっとも好きにはなれなくなるものよ」哲学的な会話が続く。北風のもうひとつの名前とは・・。→2020/03/15
seacalf
55
美しいものに触れると何故だか泣きたくなるような気持ちになる。それは心の奥底の琴線に触れるからか、上書きしてしまった無垢な心を思い出すからなのか。ダイアモンド少年の活躍を読んでいると、そんな思いに駆られる。病に倒れた父の代わりに辻馬車を操って家計を助けたり、枠物語のヒノヒカリ姫やナニーの夢など読み処は幾つかある。が、上巻にあったような北風と夜空に繰り出すような喜びに溢れた展開は少なく、最後も美しいがやはり物悲しさがつきまとう。ダイヤモンド少年、折に触れて思い出したくなるような忘れがたい登場人物がまた増えた。2022/05/29
Gotoran
42
ロンドンの馬小屋に暮らす少年ダイアモンド。ロンドンの雑踏、活気溢れる街、水溜まりやごみごみした様子。北風が吹き込む馬小屋に暮らすダイアモンドは、人への思いやりがあり、誇りを持って生きている。本書(下巻)では、北風のうしろの不思議な国から戻ったダイアモンドは、健気に辻馬車の御者として働き、産業革命期の生活に疲れたロンドンの人々に優しさを取り戻させていく。・・・最期は、物悲しい雰囲気が漂ってしまう。これが著者マクドナルドの死生観か。2020/01/26
鳩羽
16
父親の仕事を手伝い、母を助け赤ちゃんの世話をしと相変わらず善良な良い子のダイヤモンドは、周囲にもよい影響を与えていく。努力と辛抱は報われ、謙虚で誠実であることの美徳を読むことは、やはり嬉しいものだとも思う。現実世界が充実するに従って北風はあまり出てこなくなり、北風のうしろの国の思い出がダイヤモンドの善良さの根幹のようになっていく。唐突に感じられるラストは、人の世のあれこれや物語に一切頓着しない大きな手のひらに摘み取られたかのようで、ぼうっとしてしまった。2016/03/06
泉のエクセリオン
12
最後の展開は唐突に感じたがルイスの『ナルニア国物語』の最後で子どもたちが、本当のナルニアに旅立つ展開に似てると感じた。ダイヤモンド少年の場合は本当の詩人であり、彼の居場所はこの世ではなく「北風とうしろの国」なのかなと思った。又、作中レイモンドさんの語る「ヒノヒカリ姫」の話は「茨姫」をモチーフにしながらも、月明かりの下に踊るヒノヒカリ姫の描写は本当に美しく詩的であると感じた。トールキンの作品にこういう場面あったなぁと、やっぱり影響を受けているのかなーと思った。 2024/06/29