内容説明
御者の息子ダイヤモンドは,美しい女性の姿をした北風に抱かれ,夜のロンドンの空や,嵐の海をかけめぐる.そして北風のうしろにある不思議な世界へ.もどってきた幼い少年は,そこで聞いた楽しい川の歌を口ずさみながら,貧しい暮らしにあえぐ家族や友人を助け励まし続けるのだった.イギリスファンタジーの名作を新訳で.
目次
目 次
第1章 干し草置き場
第2章 芝 生
第3章 ダイヤモンドじいさん
第4章 北 風
第5章 あずまや
第6章 嵐のなかへ
第7章 大聖堂
第8章 東の窓
第9章 ダイヤモンド、北風のうしろの国へ
第10章 北風のうしろの国
第11章 帰り道
第12章 待ってくれていた人
第13章 海辺で
第14章 めぐりあい
第15章 厩 舎
第16章 ダイヤモンド、とりかかる
第17章 ダイヤモンド、続ける
第18章 飲んだくれの御者
第19章 ダイヤモンドの友だち
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
78
真っ直ぐな心を持つ少年ダイヤモンドと、美しく不思議な北風の出会いから始まるファンタジー作品。上巻は何とも掴み所がないが、しかしそれがまたとても魅力的だ。北風は著者作品によく見られる、畏敬を感じさせながらも深く包み込む慈愛を湛えた大いなる母、といった存在だが、今まで読んだ中では一番容赦ない。なかなか厳しい対応が多く、何と言ってもダイヤモンドに向かって繰り返し放つ「おばかさん」は印象的。それでも、他作品よりむしろ優しく思えるのは、相手任せではなく世話焼きだからなのだろう。ドラクエ5のデボラタイプ(←大好き)。2022/06/10
アルピニア
65
この物語の主人公はダイヤモンドぼうや。まだ字も読めない小さな男の子だ。ある日寝床の壁の穴から北風がやって来る。ダイヤモンドは、牧師さんから聞いた「北風のうしろの国」へ連れて行ってもらう。「親切とは、公正以外の何物でもないわ」北風との会話はとても哲学的だ。戻ってきたダイヤモンドは激変した環境の中で自分にできることをやろうと決めて進んでいく。心に残ったのは父親と友達について話すところ。「何かしてくれる人じゃないと友達じゃないの?」「赤ちゃんは何もしてくれてないっていうの?」まっすぐな言葉にハッとする。下巻へ。2020/03/15
seacalf
52
指輪物語やナルニア国物語に影響を与えたというジョージ・マクドナルドの古典的名作。立派な御者の息子であり、まだ純粋無垢な少年ダイヤモンドは美しい姿と大いなる力を持つ北風と近しくなり、夜な夜な冒険を繰り返すうち、いつしか北風のうしろの国という不思議な場所へ行くことになる。頭の弱い子と勘違いされるくらい一切擦れていない少年のピュアな心に触れ、彼と一緒に不思議な体験やロンドンの街を闊歩することによって、ひととき現実から離れて癒される読書ができる。このまま下巻へ。2022/05/29
Gotoran
43
河合隼雄著『ファンタジーを読む』繋がり第7弾。L.キャロルと共に英児童文学の黄金時代を築いたと云う著者J.マクドナルド。御者の息子ダイヤモンドは美しい女の姿の北風に抱かれ、夜のロンドンの空、嵐の海を飛び、やがて北風の後ろにある不思議な世界へ。戻ってきた主人公の少年は貧しい生活に喘ぐ家族や友人を助け励ますも・・。著者の宗教観、特に死生観、社会批判等が、ダイヤモンドの体験を通して語られ、北風を信じることで、大自然の奥底の永遠なるもへの願いと憧れが描かれている。2019/12/30
鳩羽
17
貧しい御者の子ダイヤモンドは、女の人の姿をした北風と仲良くなる。花の陰に隠れられるくらい小さくもなれば、巨人のように大きくもなる北風は、花を揺らすだけのこともあれば船を沈めることもある不思議な存在。やがてダイヤモンドは、北風のうしろにある国へ行ってみたいと願うようになる。…不思議な世界へと赴くファンタジーかと思いきや、むしろ不思議の世界を体験した子供が、その善良さ素直さを勇気を持って世間に示していく話だった。そういう意味では、道徳の本のような説教くささを感じるかも。でも大人には結構沁みる。2016/03/04