内容説明
昼は平凡なサラリーマン、しかし夜は組織へ反逆の牙を剥く一匹の狼。朝倉哲也は、鍛え上げられた肉体と天才的頭脳を武器に、大企業や暴力団に次々と挑んでいく。ついに掴んだ栄光の果てに彼が見たものは。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
森オサム
53
著者初読み。書かれたのは昭和37年から39年にかけてであり、前回の東京オリンピック前夜。主人公朝倉哲也は29歳、当時の大藪氏と同年代。自身を投影した物だとすると、何とも恐ろしい人物を作り上げたもんです。何度死刑になっても足りない程の悪党、何人殺すねん!。しかし昏い魅力を感じざるを得ない、これぞピカレスクハードボイルドか。余りにも古い時代ですが、高度経済成長期の貧富の差が背景となっていて、現代にも通じる面が有るのかも。しかし男が興味のある物は今も変わらないなぁ、自分の腕に填めたロレックスを見て思った(笑)。2019/04/20
カタコッタ
15
村川透監督『蘇える金狼』にはちょっとした思い出が有る。当時松田優作好きの友人に影響してされて初めて一人で映画館に入って観たのがこれだった。思った以上に面白かった。私には松田優作以上に風吹ジュンがカッコ良く、以来大ファンだ。衣装(芦田淳)も前野曜子が歌った主題歌も。映画館を出た後そのままデパートに入り映画でイカすと思った3本のボックスプリーツの入った白いスカートを買い、履いたまま帰宅した若かりし頃の思い出です。映画の内容をスッカリ忘れていて今回読んでみた。懐かし過ぎるほどの昭和があった。面白かった。2022/07/04
コチ吉
9
朝倉の過去や背景など一切描かれず、ひたすら己の目的を果たすために淡々と突き進む。体重に貫、足のサイズに文という表現に、いつの時代の話なんだと思ったが、それだけ日本のハードボイルドの先駆けの証し。鳥もも足三本にレモンを丸齧り。うーん渋いと言うかなんと言うか。続けて完結編へ。2021/12/31
r2d2
6
普段は平凡なサラリーマンを装うが、その実は目的達成のためには手段を選ばない冷酷非情なアサシン、朝倉。巨大資本の乗っ取りを画策する。完結編へ続く。1979年に松田優作主演で映画化された。2024/03/10
史
6
金と暴力とセックスと薬。これこそハードボイルドの原型と言うべきか、先駆者と言うべきか。しかしながら、やはり1974年に刊行された作品かと思うほどに、実に無秩序な世界である。それは現実もそれくらい適当だったのかもしれないけれども。この物語は、2021年と言う時代にとっては、むしろファンタジー小説の枠なのかも。それと、いつの時代も昼と夜、表と裏で変貌する主人公は魅力に溢れるということ。2021/12/13