内容説明
喧嘩と暴力が日常の沖仲仕の上にも、近代化の波は押し寄せる。巨大資本による石炭積み込みの機械化が企てられ、若松港で玉井組の親方となった金五郎は、荷主側との交渉に身体をはった。争議、脅迫、奸計、ヤクザとの生命をかけた抗争……。時代の激流と沖仲仕の独特な信念がひきおこす事件の連続のなかに、明治の男と女の豪放で繊細な交情を鮮やかに定着させた、痛快無類、興趣抜群の自伝的長編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
リュウジ
8
★4 ああ、面白かった!面白さの一つは、未成熟だった近代社会の有り様が知れたこと。もう一つはそこで生きた人たち(資本家、労働者、やくざ、活動家、政治家)のありのままの姿、考え方が知れたこと。登場する人物たちは実名(そしてそのうちの一人が作者自身)。「今ニ見テオレ」、「お前らに負ける者か負けるもんか」。現代にはいないタイプのギラギラした人間たちの欲と信念がぶつかりあい、時代を次の新しい時代へと進めていったのだ。そんな話にピュアな恋愛をいくつも盛り込んでいく。見せ場のつくりも面白い。初めて読んたタイプの小説。2021/11/13
みい⇔みさまる@この世の悪であれ
0
☆×4.5…男と女、その下巻。男は任侠の世界にいながら暴力を用いて権力を維持しない「稀有」な男。自分の手腕のみでのし上がって言った男。そんな無敵に見えた男にも何回か死への手が触れようとします。だけれどもさすが金五郎ですよね。それすらはねのけてしまいます。たった一度のみ彼の禁を侵すことがありますが、それでも彼はやはりかっこいいです。そんな夫を支えるマンはやはり強い女。冴えない金五郎に張り手をかますときなんか…私もこんな女になりたいものです。2012/04/18
さんぺい
0
アフガニスタン支援に尽力した中村哲医師の著作を読んで、芥川賞作家火野葦平が母方のおじであること、そしてこの本が葦平氏が書いた哲医師の祖父、祖母の(葦平氏にとっては父母の)一代期であることを知り、興味本位で手に取った。明治の北九州を舞台にした沖仲仕の話で、もちろんそこには対立や暴力が溢れているが、主人公である金五郎は、危険と背中合わせの状態でも破格なほどの正義感を有し、そして暴力に対してあくまでも非暴力で対抗するといったスタイルで、それはそのまま中村医師と重なり、勝手に納得してしまった。2024/12/12
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