内容説明
作家としてのみならず学究・評者として非凡であった福永武彦が、深く心の裡に愛した文学者について自ら記した文章を蒐めて、「意中の文士たち」と名づけたエッセイ集上下巻のうち、上巻を収める。鴎外・漱石・芥川・荷風・谷崎・梶井基次郎・中島敦、そして川端康成への、いわば福永武彦の「感謝の現れ」をオマージュとして捧げた文章である。
感想・レビュー
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KAZOO
19
文芸評論ということで、鴎外、漱石、芥川、荷風、梶井基次郎、中島敦などそうそうたる文学者についての小論が並んでいます。私は鴎外も好きなのですが、ここでは漱石の三部作について書かれたところを興味深く読みました。川端さんとの手紙のやり取りも心が通い合っている感じがしました。2014/09/16
月
15
福永武彦が、心の裡(底)に刻む意中の文士たちについて、著者ならではの角度で語る評論(エッセイ)集。上巻は、鴎外・漱石・芥川・荷風・谷崎・梶井・中島・川端について取り上げられている。其々にとても興味深い内容だが、特に印象深かったのが、鴎外と梶井の章。鴎外の小説における野心と挫折については、鴎外を読み解く上でもとても勉強になる。梶井文学の闇と光、そしてその古典主義的な静けさ。芥川と志賀の対比(志賀は人生を選んで殆んど筆を絶ったが、芥川は芸術を選んで・・)も面白い。中島もまた再読してみようかと思う。 2014/07/31
masawo
1
軍医でもあった森鴎外を、福永氏が未完作の挫折の原因などについて徹底的に腑分けを試みている。他にも近代文学者の数々の立役者に対して容赦ない批評が為されているが、唯一川端康成に対しては親愛の情が見え隠れしているように感じた。2017/09/29