内容説明
事業の鬼にして文化人の、華麗なる一代記。想像だにしなかった株価の大暴落は、証券会社支配人の夢を一三から奪いさった。だが、それがかえって好運だったのかも知れない。新たに企画された私鉄建設の話が彼の前途に洋々と開ける。私鉄、デパート、歌劇、映画と、庶民の欲望を見抜いて先取りしたカルチャー商法で「大阪急」を築いた男の明治魂を描く話題作。
感想・レビュー
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まつうら
20
(上巻の続き)宝塚歌劇団が商業的にも芸術的にも大成功を収めるのは、この小林のプロモーションの巧みさゆえと思われる。この歌劇団には、脚本演出をまかせていた安藤が一時失踪する事件がある。その不在の穴埋めに、小林自身が脚本を書き、楽曲をつくるということをしている。小林の才能はいったいどこまであるのだろう? とても驚きだ! 物語は、神戸線が開通するまでの困難を描くところで終わっているが、その後、阪急百貨店を創業し、東宝映画グループを設立している。後年の小林の活躍にも、とても興味をもった。2021/10/12