内容説明
その回転翼が終末世界を切り拓く。
人造の豊穣神・ユグドラシルによって繁栄を極めた近未来。人類は植物を自在に操り、時にはビルさえ“育てていた”。そんな文明絶頂期の中で、『大崩壊』は起きた。世界人口の半数以上が死に絶え、各地ではあらゆるシステムが麻痺。さらに突如現れた樹獣、樹竜と呼ばれる異形の怪物たちによって、人類はあっという間に地上から追放され、その拠点を人工の浮島・海上都市へと移した。
『大崩壊』から数十年。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り、樹竜狩りを生業とするヤブサメ。彼は妹が患う奇病を治すため、師であり相棒でもあるモズとともに仕事をこなしながら、日本各地を飛び回っていた。そんな中、二人は東京第一空団副長セキレイの窮地を救い、その腕を買われて旧都市・新宿での大規模探索作戦への同行を依頼される。彼らを必要とするセキレイはヤブサメにこう囁きかけた。
「この作戦の成功は、キミの妹の病を治す事に繋がるかもしれない」
しかし新宿は「帰還不可能」とも噂される、Sクラスの危険地帯。割に合わないと、モズは難色を示すのだが――
これは鋼の翼と意志で空を駆り、樹竜を狩る者たちの物語。第12回小学館ライトノベル大賞・審査員特別賞受賞作。
※「ガ報」付き!
※この作品は底本と同じクオリティのカラーイラスト、モノクロの挿絵イラストが収録されています。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
海猫
64
近未来設定のSFであるが、世界観の作り込み方はもうちょっと遠未来な感じ。文明が崩壊した世界はかなりかっちり描きこんである。ただ、その世界が興味深かったり魅力的というにはちょっと弱いので、中盤少しダレる。また樹獣、樹竜といったモンスターが、文章からイメージしにくいのも迫力に欠け、物足りない。一方、主人公コンビが活きが良く掛け合いが面白い。ヘリコプターメインのメカニックアクションは、軽快でスピード感ある。全体的なバックボーンにグレードアップがほしいところ。2018/07/29
まりも
36
人造豊穣神ユグドラシルの反乱で大地を奪われた世界。その世界を小型ヘリで切り拓く物語ここに開幕。小型ヘリvs巨大生物。ありそうで無かったこの独特の設定を活かした大迫力の空中戦はまさに圧巻の一言。これに興奮しない男の子はいないだろう。モズとヤブサメコンビの掛け合いも世界観にマッチしており、ちょっとした映画を観てる気分になれる。合間に挟まれるヤブサメのマニアックぶりも味がでていい感じ。空戦シーンが序盤と終盤だけというのは残念だが、デビュー作でこれだけ面白いんだから大したもんだと思う。続刊があるなら期待したい。2018/07/21
よっち
34
人造豊穣神の大崩壊で跋扈するようになった異形の怪物により人類が地上から追放された世界。小型ヘリ<静かなる女王号>を操り樹竜を狩るモズと相棒ヤブサメが、その腕を買われ旧都市新宿での大規模探索作戦に参加する近未来ファンタジー。豪快なモズと彼女に振り回されながちなヤブサメのコンビを中心に、立場の違う空団の面々と時にはいがみ合いながらも、強大な敵を相手にギリギリの戦いを繰り広げてゆく中で認め合うようになってゆく熱い展開に、その物語を締めくくる意外なオチもまた効いていました。続編あるようならまた読んでみたいですね。2018/07/18
たこやき
21
何よりも世界観が好き。現代文明が滅び、人類は地上を追われた世界。地上には、樹竜などの怪物が溢れている。その中でも、最も混沌となった新宿に挑むは、小型ヘリで樹竜を倒すハンター・モズと相棒のヤブサメ。しかし、金にだらしないモズと、それに振り回されながら抜群の操縦技術を誇るヤブサメのやりとり。依頼主であり、やり手の東京第一空団の副長セキレイの駆け引き。その間のアレコレ。凄腕ハンターの文字通りの「すごさ」。しかし、その限界。世界の広さ。そういうものをシンプルに描き切った話だと思う。2018/10/24
緋莢
19
あらゆる植物を支配し、人造の豊穣神といわれた「ユグドラシル」。だが、突如、人類に牙を剥き、樹獣や樹竜といった怪物を先兵とし、人々は地上を追われて海上に都市を作り、暮らすようになった世界。小型ヘリ<静かなる女王号>で 樹竜狩りを行い、生計をたてるモズとヤブサメが主人公です。ヘリコプターがメインというのが珍しく、樹竜も〝竜”とはついていますが、海栗のような姿、苔の絨毯のような姿など色々なものがいて、ユニークでした(続く2019/04/02