文春文庫<br> 山本周五郎名品館IV 将監(しょうげん)さまの細みち

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文春文庫
山本周五郎名品館IV 将監(しょうげん)さまの細みち

  • ISBN:9784167911058

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内容説明

没後50年、いまもなお読み継がれる巨匠の傑作短篇から、沢木耕太郎が選び抜いた名品。
山本周五郎の世界へ誘う格好の入門書であり、その作家的本質と高みを知ることができる傑作短篇集の第4弾!
生涯、膨大な数の短篇を遺した山本周五郎。
その大半がいまだに読み継がれ、多くの読者に愛され、また後進の作家たちに多大な影響を与え続けている。
山本周五郎作品に深く傾倒する沢木耕太郎氏が独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆。
第4巻(最終巻)は「悲と哀のあいだ」。山本周五郎と深い交流があった同時代の作家・山手樹一郎の「作家としての悲哀」を紹介し、同じように「かなしみ」を表すが微妙に意味合いの異なる「悲」と「哀」が、周五郎作品でいかに描かれたを分析する。

本書の収録作は以下の9篇。
「野分」(江戸っ子の老人の意地が生み出してしまう孫娘のかなしみ。)
「並木河岸」(子供を持てない夫婦の行き場のないかなしみ。)
「墨丸」(養家で育った娘とその家の息子との何十年にも渡る交情。)
「夕靄の中」(かなしみが新しい人間の関係を生み出す不思議。)
「将監さまの細みち」(岡場所の女の消えそうで消えないかなしみ。)
「深川安楽亭」(はぐれ者たちが集う居酒屋での群集劇。)
「ひとごろし」(臆病者の武士が藩内一の武芸者を上意討ちできるのか?)
「つゆのひぬま」(かなしみを抱いた男と女の最後の救い。)
「桑の木物語」(主君と固い絆で結ばれた元ご学友が、後年遠ざけられたのなぜか?)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

102
文春文庫から4分冊で出た山本周五郎短篇集の最後の巻です。沢木さんが選んだ作品は全部で36の短編ですがここでは「悲哀」「かなしみ」というテーマで9つの作品が収められています。既読の作品が多く再読ですがこのようなテーマで読むとまた印象が異なりました。「ひとごろし」は2回も映画化されていたようです。私はみていませんでした。最後のエッセイで山本周五郎と山手樹一郎の交情が描かれていて知らなかったことなので参考になりました。2018/07/14

キムチ

63
3冊連続で読むと、病膏モウ(←差別用語だね)的な感覚に陥る。江戸・・もっとも世界的に中世が「心身共に寒く、身分の段を越える事は無知以前、絶望の時間だと改めて感じる。この作品集、男女の情愛が色濃く結集。岡場・居酒屋・・病夫、父、幼子に囲まれがんじがらめの女たち。身分という見えない鎖が縦横に張り巡らされた隙間で幽かに息をしている人々の息遣い。50歳超は「老女」枯れ木のような手足とざんバラの白髪頭。背景によく登場する老松の情景がぴったり。殆どの場面に登場する酒くらいしか憂さが晴れない。小道具の欠けた茶碗で完璧。2022/11/11

ぶんこ

50
感想を書いている時「悲」と「哀」のどちらを選ぶか迷います。そんな時は自分の感じた心持ちで選んでいたのですが、沢木さんの解説を読んで「悲哀」の違いに「そうそう」と納得したのです。4巻目は女性の「哀」をテーマにした作品集と思っていたのですが、途中から男性の「悲」も感じられる作品が出てきました。見事に「悲哀」が書き分けられています。私は女性だからか「野分」や「墨丸」に心惹かれました。ただ流産を繰り返す妻を持った夫側の心情を描いた「並木河岸」にも感動しました。沢木耕太郎選のシリーズが終わってしまい残念。2019/03/29

藤月はな(灯れ松明の火)

49
「野分」の恋の締め括りがなんとも遣る瀬無い。特に又三郎が武家では無ければ、家族になる事ができたのかもしれないのが余計に・・・。表題作は夫、利助の誓がどこまで続くのかが安心できないがおひろさんはそれを飲み込んで生きていく覚悟を決めたのだろう。「並木川岸」の一瞬の魔が去る遣り取りや「桑の木物語」の友情故の別離も沁みます。そして唯一、異質な「ひとごろし」。題名はギョッとするが、臆病者を自他共に認める武士の仇討ちが如何になされるのかなので何ともとぼけている。だが、その方法は有効だし、ラストの落とし所も晴れやかだ。2025/05/04

kawa

31
沢木耕太郎選最終巻。どの作品も味わい深い逸品。特に周五郎版「坊ちゃん」の趣きの人物造形を主人公に据え、主従を超えた友情を描く「桑の木物語」が今のところのマイベスト短編。2022/06/25

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