文春文庫<br> 寒橋(さむさばし) 山本周五郎名品館III

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文春文庫
寒橋(さむさばし) 山本周五郎名品館III

  • ISBN:9784167910907

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内容説明

没後50年、いまもなお読み継がれる巨匠の傑作短篇から、沢木耕太郎が選び抜いた名品。
山本周五郎の世界へ誘う格好の入門書であり、その作家的本質と高みを知ることができる傑作短篇集の第3弾!

生涯、膨大な数の短篇を遺した山本周五郎。
その大半がいまだに読み継がれ、多くの読者に愛され、また後進の作家たちに多大な影響を与え続けている。

山本周五郎作品に深く傾倒する沢木耕太郎氏が独自の視点と切り口で4巻36篇を選び、各巻の末尾に斬新かつ詳細な解説エッセイを執筆。
第3巻は「寒橋のまぼろし」。沢木氏の父の出生地であり、「寒橋」の舞台・旧小田原町(築地)に思いを馳せ、「さまざまな情が乱反射する、『情』の万華鏡とも言うべき」収録作の魅力を解き明かす。

本書の収録作は以下の9篇。

「落ち梅記」(武士の、同輩への友情と、許婚への断ち切れない愛情との葛藤)
「寒橋」(女房から亭主への、また父の娘に対する「情」が交錯し意外な結末を迎える)
「なんの花か薫る」(若侍をかくまった岡場所の女。シンデレラストーリーの結末は?)
「人情裏長屋」(不意に託された赤ん坊に対する浪人の人情が愛情に変わっていき……)
「かあちゃん」(裏長屋住まいの聖一家の究極の人情物語)
「あすなろう」(女衒のような女たらしと目明しに追われる凶状持ちの会話の行方は?)
「落葉の隣り」(親友の職人としての腕に惚れ込み、好きな女まで譲ったが……)
「茶摘は八十八夜から始まる」(改易で岡崎藩にお預けとなった殿様の、相伴役を買って出た男)
「釣忍」(恋女房と平穏に暮らすぼて振り定次郎が、じつは大店の勘当された息子だった)

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

117
沢木さんによる山本周五郎短編作品の第3冊目です。今回は義理人情に焦点を当てた作品が9編収められています。私も結構短篇も読んだつもりでいたのですが、この作品すべて未読でした。最初の「落ち梅記」、表題作の「寒橋」、「茶摘は八十八夜から始まる」が印象に残りました。結構ほろりとさせる作品です。あと1冊を残すのみとなりましたが楽しみです。何回も読みなおすことになりそうな作品集です。2018/07/01

じいじ

69
沢木耕太郎が選択した「周五郎の短篇集」と言うことで、一層の期待が膨らみます。「人情裏長屋」など既読も4作ありましたが、山本周五郎にはハズレなしなので面白く読了。ここでの紹介は初読みの表題作【寒(さむさ)橋】これは「夫婦の情愛」を描いた周五郎の秀作で、出来ることなら長編で読んでみたい中身の濃い一作です。夫に嫉妬するお考がいじらしく愛おしいです。このお考は、周五郎の『おたふく』のおしずに重なる絶品の良い女です。この物語には奥深く「?」が隠されています。お考が可愛がる女中のおたみが身ごもります。腹の子は誰の子?2025/04/30

キムチ

68
巻末で沢木氏が山本氏の「情の世界」のすごみを熱く語る・・自らの父の思い出や来し方も絡ませて。しかし、山本氏の作品で「情」の水脈が無いモノってないと思うが。子供向けのユーモア小説ですら・・ある。とは言えこの集はその中でも傑作を揃え、読み手を唸らせる。「人情長屋」「かあちゃん」「釣忍」は有名どころだが。「落ち梅記」の由利江の思惑はむしろ嫌な感じ・・自分がこの人を変えて見せるって。。一つ間違えば思い上がりにも通じる「寒橋」しみじみ余韻に浸る・・おたみの腹の子の父は○○だと思うけどね・・まぁ、邪推は自由だし。2022/10/31

藤月はな(灯れ松明の火)

55
今巻は友情・忠義、どちらに尽くしたとしても自分にとって最良の形で報われるとは限らない人生の一端を抉り出す「落ち梅記」からスタートする。初っ端から重いよ・・・。特に「なんの花か薫る」は映画『ANORA』を思い出し、溜息。久しぶりに逢った婚約者の美しく、成長した姿に見惚れたと宣うこの男はずっと、このような不実を積み重ねるのだろう。ただ、その不実に真剣に怒ってくれるみどりさんがいるのが救いか。一方、「あすなろう」ははみ出し者故に悪人になった男がたった一つだけした善意が当事者にとっては端迷惑だったという事実は苦い2025/04/20

ぶんこ

43
実母の実家が小田原町であり、沢木さんの本籍地でもあると知ってなんだか嬉しくなりました。「寒橋」があった辺りも解説に書かれていたので行ってみたいです。「情」シリーズの9編で、数編は読んだ事がありましたが、表題作始め「人情裏長屋」の信兵衛さんが赤ちゃんの為に人が変わったようになるのにほっこり。「なんの花か薫る」は最後の最後に驚く結末が待っていて、唯一哀しくなった作品でした。2019/03/24

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