内容説明
【あなたの死後、不要となるデータを削除いたします。】
罪の証。不貞の写真。隠し続けた真実。
『dele.LIFE』で働く圭司と祐太郎の仕事は、秘密のデータを消すだけ――のはずだった。
あなたの記憶に刻まれる、〈生〉と〈死〉、〈記憶〉と〈記録〉をめぐる連作ミステリ!
『dele.LIFE(ディーリー・ドット・ライフ)』。
真柴祐太郎がその殺風景な事務所に足を踏み入れたのは、三ヶ月ほど前のことだった。
所長であり唯一の所員でもある坂上圭司いわく、
「死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わってデジタルデバイスから削除(delete)する。それがうちの仕事だ」。
誰かが死ぬと、この事務所の仕事が始まるのだ。
新入りの祐太郎が足を使って裏を取り、所長の圭司がデータを遠隔操作で削除する。
淡々と依頼を遂行する圭司のスタンスに対し、祐太郎はどこか疑問を感じていた。
詐欺の証拠、異性の写真、隠し金――。
依頼人の秘密のファイルを覗いてしまった二人は、次々と事件に巻き込まれる。
この世を去った者の〈記録〉と、遺された者の〈記憶〉。
そこに秘められた謎と真相、込められた切なる想いとは。
『MISSING』『MOMENT』『WILL』などで「生」と「死」に直面した人々を描いてきた著者が、
今だからこそ書き得た新たな代表作。
≪dele=ディーリー。校正用語で「削除」の意。≫
※本書は、二〇一七年六月に小社より刊行された単行本を加筆修正の上、文庫化したものです。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みも
230
死後、不要データの消去を依頼する。例えば、赤裸々に記した日記は近親者にも読まれたくない。かと言ってそんな重大な作業を、赤の他人の一業者に依頼し得るか…否!なんとなれば、そのデータを悪用されない保証はどこにもないから。死者と生者の思いは必ずしもシンクロし得ない。人間の繋がりなんてそんなものだ。だが、死は否応なく何かを派生させ、影響を被る生者が少なからず存在する。ましてそれが幼子ならその大きさは計り知れない。「ドールズ・ドリーム」亡母が遺した5歳の少女。少女はこの試練を乗り越えねばならない。#ニコカド20202021/01/08
bookkeeper
229
★★★★★ 初読。依頼者の死亡時にデジタルデバイスからのデータ消去を請負う商売に従事する二人。依頼者の大部分は、依頼の理由や消去する中身について、知らしめる事なく亡くなっている。そこにミステリがある訳ですね。 契約の事実を重視して、背景を斟酌せずに消去しようとする圭司と、背景や事情を知るまでは消去すべきではないと考える祐太郎。2人の葛藤とやがて明らかになる真相が、しっとりとした余韻や感動を運んでくれます。粒揃いの5話だが、「ファースト・ハグ」「ドールズ・ドリーム」が良かったです。 「それ、消すの?」2019/07/24
散文の詞
182
『死後、データを削除』というプロットが面白そうで、しかも、データの削除って案外と難しいので、その点に興味があって読み始めたのけど、『削除』『消去』とあっさり片付けられてて、かなりがっかりでした。 バックアップやクラウドなど、技術的な面も含めて、簡単には『削除』できないと思うのですが…。 まあ、プロットは話のきっかけになってて、全体的にはライトな感じの連作短編です。 しかも、案外と、アナログ的な部分が多いので受け入れやすのではないでしょうか。 2021/09/17
修一郎
167
ドラマ観るため慌てて原作を読んだけども,TVはオリジナル脚本だったみたい。予想通り山田孝之は坂上圭司のイメージ通りだ。橋本愛さんが出演した第5話は原作の「ドールズ・ドリーム」とテーマが同じ。お気に入りはドラマの余貴美子と高橋源一郎の第3話。ドラマは原作の持つ世界観を良く再現していると思うぞ。ドラマと原作同時進行中。dele2へ。。。2018/08/26
ぱるぷ
163
★★★☆ 死後、誰にも見られたくないデータを、その人に代わりデジタルデバイスから削除する……短編。ドールズ・ドリームに大号泣‼︎ 優しいお話。ドラマも観たい‼︎2018/07/07