内容説明
鎌倉時代前期に成立した代表的説話集。貴族・僧などの著名人から、下級官人、侍、庶民、子供まで、登場人物が多様で世俗的傾向の強い話を集める。強力譚、報恩譚、聖譚、不思議譚、艶笑譚など世の万般を描く切れ味鋭い話の数々。本巻には「舌切り雀」「瘤取りの話」「芋がゆ」など現代に伝わる物語をはじめ百余話を収録。古本系統「伊達本」を底本として現代語訳、語釈、解説を付す。
目次
一 道命阿闍梨、和泉式部の許に於いて読経し、五条の道祖神聴聞の事
二 丹波国篠村に平茸生ふる事
三 鬼に瘤取らるる事
四 伴大納言の事
五 随求陀羅尼、額に籠むる法師の事
六 中納言師時、法師の玉茎検知の事
七 龍門の聖、鹿に替らんと欲する事
八 易の占して金取り出す事
九 宇治殿倒れさせ給て、実相房僧正験者に召さるる事
十 秦兼久、通俊卿の許に向かひて悪口の事
十一 源大納言雅俊、一生不犯の金打たせたる事
十二 児の掻餅するに空寝したる事
十三 田舎の児、桜の散るを見て泣く事
十四 小藤太、聟におどされたる事
十五 大童子、鮭盗みたる事 など
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
33 kouch
28
各お話が短くて読みやすい。勧善懲悪的なもの、因果応報、儒教的な説教めいたもの、少し意味不明なもの。「多野満仲のけらいとお地蔵様」少しでも良いことすれば救いの手はある。「伏見修理大夫俊綱の前世」因果応報の結末。「スズメの恩返し」意地悪はダメ。これらは以降の日本に伝わるお話や伝承に少なからず影響を与えている気がする。登場人物はどこか抜けている感じで親しみをもてる。重いテーマでもユーモラスなタッチで描かれているのが特徴。老若男女楽しめる。伝播するようにひと工夫されているのかも…2024/12/03
やご
3
宇治拾遺物語は鎌倉時代に成立した説話集です。『こぶとりじいさん』や『舌切り雀』の源流と思われるものや芥川龍之介の『芋粥』等の元ネタとなったものなど、多彩なお話が上・下で合わせて197篇収められています。この本は全篇、現代語訳・語釈・参考付きで古文が読めなくてもだいじょうぶ。 こういうものが比較的お手頃値段の文庫で気楽に読めるようになったとは、まんざら悪い時代でもございません。(続く)→ https://gok.0j0.jp/nissi/1331.htm2022/10/19
ノルノル
3
現代語訳だけでなく、原文・語釈・参考が各話につけられているので初学者に有益。参考は要は評だが、本当に参考までにこう読めるという「案内」という感じで好ましい。2018/04/15