内容説明
毎日、工場で鉄板を曲げ続けるまり江。口うるさいパート達にも、ベタベタするママ友にも、怒りにも似た苛立ちを感じていた。そんなまり江の宝物は5歳の娘・咲季だけだ。夫は数ヵ月前、家を出て行った。理由はわからない。まり江は、深夜、発泡酒を片手にアダルトサイトを閲覧する。自慰行為に耽る自分が、リビングに設置されたウェブカメラに映るように。この映像を、夫がどこかから見ているかもしれないと思いながら――。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あも
95
えぐい程すごい。夢追い人系の旦那が失踪、5歳の娘を保育園に預けて工場でパートする30代後半のまり江。ママ友グループLINEから一人だけハミられ、工場でコミュショーと陰口をたたかれ意味を検索。娘が寝た後酒を飲んで自慰をする真夜中。鋭い棘に傷付けられないよう対抗しても敵に届きもしない小さな棘は自分だけを傷付ける。溜め込んだ感情を爆発させ、自らを嫌悪し、足踏みしながらもかろうじて前を向く。せめて向きたいとだけは願う。生き辛さに懊悩する気持ちに否応なく同化してドクドクと血が流れる苦しい1冊。でも、読んで良かった。2018/10/16
野のこ
75
人付き合いが不器用で、ママ友や仕事仲間とうまく関係を持てないまり江。いきなりトラックの運ちゃんに罵声を発したり、台所に発泡酒が増えていったりと、その生きづらそうな毎日に読んでて辛かった。小川さんははじめ私も苦手なタイプやなぁと思ってたけど最後のお見舞いのところではほろっとなりました。まり江、心配だけど小川さんからよい影響を受けたり梓さんという友達も出来たりと少しずつ希望が見えて良かったです。装丁は痛々しいけど魅了されました。2018/08/19
ごみごみ
71
人見知りで人付き合いがうまくいかないまり江。自分をコントロール出来なくなり、暴走するさまは凄まじい。職場やママ友、家族との関係に悩み、負の感情ばかり抱き苦しむまり江の言動は、読んでいてしんどい。・・自分自身、全ての人とうまくやっていくなんて無理、自分が合わないと思ってる人は向こうもそう思ってる、そんなことに気づいたのはいつ頃だっただろう。それでも付き合っていかなきゃいけない人たちはたくさんいる。心の中で悪態をつくこと、誰にでもあるよね。でも人は一人では生きていけないのだから、そう思って前向きに!2021/01/31
おかだ
67
保育園のママ友付き合いウゼー、パート先のめっちゃ喋るババアウゼー、夫は行方不明で娘は可愛いけど寝かしつけた後は酒浸り…。まり江の日常、読んでるだけで疲れるんだけど。たまにハッとさせられる。確かにあの時期、あの時、私も同じようなこと言ってたな。一際心に残った場面がある。まり江が梓に、名前を問われた場面だ。私も忘れない。ママになって、○○ちゃんママって呼ばれ続ける日々の中で、あの人とお互いの名前を言い合った瞬間を。ママ友じゃなく本当の友達になれた瞬間を。誰しもそういう瞬間の積み重ねに救われていくんだろうな。2019/08/15
えりこんぐ
66
前作の『カプセルフィッシュ』がすごく好きだった作家さん。今回はなかなかに重い。パート仲間やママ友に、呪詛の言葉を呟き続ける主人公の主婦。途中の病み加減に読むのがしんどくなったが、最後は少し救われていてホッとする。煩いだけと思っていたパート仲間の小川さん。人の悪口を言わないってのは、本当に強い人だ。【積読4】2020/02/14