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内容説明
大ザルがロバにライオンの皮をかぶせた偽アスランの「命令」により、木々の精霊は切り倒され、もの言う馬たちは奴隷のように働かされている。その光景を見たティリアン王は激怒し、剣を抜くが……。カロールメン国の大軍や邪神タシュまでがナルニアに到達する絶体絶命の状況で、物語は思わぬ方向へと動き出す! 衝撃の最終巻!(解説・山尾悠子)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
sin
82
ひとつの世界が終焉を迎えた。今回は出だしからトーンが違った。刊行順に云うとこの前に在る『魔術師のおい』も、いままでのナルニアと趣を異にしているように感じられた。その奥になにかしら厭世感を感じさせるのだ。おいに登場するおじの厭らしい理屈や、この作品の大ザルの身勝手な行動に象徴される人間の悪心!作者は最後は人間界もろともにナルニアを脱皮させて捨て去ってしまわれたかのようだ。◆英ガーディアン紙が選ぶ「死ぬまでに読むべき」必読小説1000冊を読破しよう!http://bookmeter.com/c/3348782018/10/15
Die-Go
72
世界的名作ファンタジー『ナルニア国物語』の改訳。長年の積ん読を漸く解放!素晴らしい幕引き。固有名詞を旧訳と照らし合わせながら読むのも楽しい。「よこしま」とか「たからいし」とか。名訳であるところの瀬田訳から、新訳に取り組むのは相当な挑戦であったと思うが、見事成功していると思う。後は挿し絵。これだけは納得が...★★★★☆2023/11/01
花乃雪音
36
ナルニア国終わりの物語。『ライオンと魔女と衣装だんす』に比肩する宗教色の強い小説だと分かっていてもそんなことを意識させることより、行きつく先の予想がついても次の展開が気になって仕方がなかった。これまでの話も児童文学として魅力的であったが本作でもって児童文学にとどまらない作品になったことがわかる。2020/11/09
tokko
36
「最後の戦い」は本当に最後の戦いであって、最後の戦いの場面は手に汗を握り緊張感が張り詰めています。結末の部分はなんとなく途中から予測できる布石が見られるのですが、そうすると厩舎の扉をくぐることの意味とは…など色々考えさせられます。特に「タシュ」が出てきたあたりから宗教戦争色が強くなってきて、じゃあ「大ザル」は「ネコ」は何になぞらえているのだろうかと考えるのも楽しいです。2018/03/16
パトラッシュ
34
ルイスの熱烈な信仰告白の書か。偽アスランの出現から戦争が起こり憎悪や背教が広がる有様はマタイ福音書の「世の終わりのしるし」そのものだし、真実のアスランがナルニアを含む世界を滅ぼして彼を信じた者だけを千年王国に迎え入れる部分はヨハネの黙示録にある神の再臨を小説化したに等しい。本書が書かれた時代は核戦争による人類の滅亡があり得るかもとされ、破滅テーマSFが流行していた。そこでルイスは児童小説の体裁でキリスト教による救いを広めようと考えたのか。その意図は魅力的な世界を描く高い文学的達成で成功したと言えるだろう。2020/04/01