内容説明
ハッカーは海を越えて、ドイツから侵入してきていた。アメリカ各地の軍事施設のサーバに入り込むだけで飽きたらず、米国から折り返してドイツ駐留米軍基地に、さらには日本の米軍基地にまで触手を伸ばしている。自分は端末の前から一歩も動くことなく世界を縦横に駆け巡り、自在にスパイ活動を行っているのだ。ドイツの捜査機関は犯人をあと一歩まで追い詰めていたが、逆探知までに至っていない。そこで著者が考え出したのが「おとり作戦」だった
―インターネットが世界を覆いはじめる前夜、「ハッカー」の存在を世に知らしめた国際ハッカー事件。その全容を当事者本人が小説のような筆致で描く。トム・クランシーも絶賛した世界的ベストセラー!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
naotan
16
面白かった! 天文学やコンピュータに明るい筆者も、電子レンジの仕組みはよく考えてなかったようですね:-)2019/03/22
まーくん
11
ローレンス・バークレイ研究所のシステムに侵入したハーカーの追跡劇下巻。1987年夏、ついにハッカーを追い詰めた。してハッカーの正体は?それは読んでのお楽しみ。自分は全くコンピュータの専門家ではないが、ちょうどその頃、VAX/VMS上で走らせる解析ソフト購入のため米国に滞在し教育を受けていた。懇意になった技術者から「これからはパソコンの時代だ。ソフトのPC版を譲るから最速パソコンを郊外のショップで買っていけ」と言われてCOMPAQ386をAMEXで買った。パソコンもネット事情も日本のはるか先を行ってた。2017/12/18
xyzw
10
インターネット黎明期におけるハッカーとの戦いをめぐるノンフィクション。当時カリフォルニア大学のサーバー管理者だった筆者が、いかにしてハッカーの不正侵入に気付き、その意外な正体を突き止めたのか。まだインターネットという言葉が一般的ではなかった時代におけるサイバー犯罪の脅威が、当事者ならではの視点で描かれている。本作を読んでいて特に興味深いと感じたのは、作中に出てくるコンピュータ関連の大企業の殆どがすでに消滅していることだ。ここ半世紀での世界のめまぐるしい変化に、改めて驚きを覚えずにはいられなかった。2022/06/26
ふたば✧早食い大王、退位するんだ
5
最終的に、侵入者は西の情報を東に(格安で?)売っていた。産業スパイなら問えるのかな、思っていたらそんなものじゃなかった。自国の情報が、軍事機密や、先端研究の情報もが軒並み抜かれているのに、「たかだか75セントの被害」と、本当に思っていたのだろうか。内部では、もっと何かあったのだろうか。組織は詳細を語ることなく、なんとなく物足りない終焉ではあった。国家組織とはかくも胡散臭いものなのか。30年たっても、こういうところは何も変わっていないように思うな。ともあれ、面白かった。2018/01/20
roughfractus02
4
東西冷戦末期のサイバー戦としてのこの国際的ハッカー事件の解決(1987)に使用されたのは、後に「ハニーポット」と呼ばれる<おとり>である。蜜を集めた壺に蜜蜂を引き寄せるように、著者の作った「SDIネット」(SDI:戦略防衛構想)と仰々しく名づけられた偽データベースにハッカーを引き込んで、その内に当局に逆探知させるという技法だ。この仕掛けを調べながらこの事件後に現れるハッカー、ケビン・ミトニックに仕掛ける下村努の罠に使われる仕掛けと比較して読むのは興味深かった。著名な暗号技術者ロバート・モリスも出てくる。2018/07/01