内容説明
〈第10回 中央公論文芸賞受賞作〉
山峡ドルジェ社長・藤岡は、開発用水晶をインドの村から入手する手筈を整えたが、やがて納品物の質は落ち、すり替えも発生。
現地に飛んで村組織を問いただすも、採掘に関わる人々に死や病など災いが生じていると突き返され、日本流の交渉が全く通じず難儀する。
かつて「生き神」だった少女ロサと再会するが、彼女は藤岡に負の予言を告げるのだった。「ここの水晶は、掘り出す人にも、持ち出す人にも、持っている人にも、良くないことが起こる」
そして更に事態は悪化。ロサは以前雇い主に「邪な種」と称されていたことを藤岡は思い返す。
州の役人により採掘が禁止され、窮地に陥った藤岡は……。
連続死、監禁と凌辱、反政府集団による襲撃…
「処女神」だった少女の運命は。
とてつもない密度の混沌と耀き
一気読み必至、圧倒的筆力で描く社会派エンタメ超大作!
解説=温水ゆかり
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
naoっぴ
81
物語がすすむにつれ展開が加速する。文化の異なる他国、それも辺境の村落で商売をすることのなんと大変なことか。さらにそこへNGOやウラン問題、武装組織のテロなどが絡まり、物語は単なる水晶採掘のビジネスだけに終わらない。部族の生活や差別を詳細に描き、混沌としたインドの世情をあぶり出す。ロサの大きな瞳が差別の闇をことごとく映し出す。そこに見えるのは日本人には理解し得ない諦念と希望が混在した感情。世界には国の数だけ異なる瞳があるのだろうか。スピード感満点の骨太社会派エンターテイメント作品、面白かった。2018/03/18
カブ
45
インドという国と水晶を巡るやり取りは、物語の中で10年を越える時が流れている。そんな時間が過ぎてしまったことを感じさせない大作。 いろいろなことが起こりすぎて最後はちょっと疲れちゃいました。2019/05/01
matsu04
40
後半は全く予想もしなかった展開ではあった。ロサの未知なる可能性が花開く成功物語程度に軽く考えていたのだが…。うーむ奥深い。いやあ面白い。インド。「あらためてその広大さと得体の知れなさを思う」…か、なるほどなるほど。何だかこっちまで、藤岡とともにインド・クントゥーニ周辺に何度も足を運び大冒険をしてきたかのような気分である。2019/10/09
James Hayashi
38
著者の「弥勒」のような雰囲気を感じつつ、インフラ不整備、賄賂、契約不履行、貧富の差、村の重役や政治家が絡む利権などインドビジネスの難しさにリスキーさを兼ね合わした冒険エンタメ小説。地方の企業の社長である藤岡の奮闘と、現地で女神的な潜在能力の高さを奮うロサという少女がストーリーを組み立てていくが、インドという大国が男性社会である事、可能性を秘めた大国の未来を感じないではないが、混沌さが強いことなど読み応え十分な重厚な作品。2018/06/03
蒲公英
31
天才少女の存在感がすごいです。クリスタルを手に入れなければならない、その焦りが強く伝わって読者をひきつけます。後半はサスペンスが一気に盛り上がりました。良い終わり方でした。2020/10/30