ハヤカワ・ミステリ文庫<br> シンパサイザー 下

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ハヤカワ・ミステリ文庫
シンパサイザー 下

  • ISBN:9784151828522

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内容説明

サイゴン陥落にともない、アメリカに亡命した南ベトナムの将軍一家。同行した大尉は、現地でベトナム人難民たちと生活しながら、ひそかに将軍の動向を同志に報告しつづけていた。ピュリッツァー賞・アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞を受賞した破格の大作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

遥かなる想い

202
ベトナム人の立場から ベトナム戦争を 描いた本作は 下巻に入っても、 アメリカで ベトナムで 生き抜く主人公の内面を ひたすら 描く。アメリカが移民のるつぼで あることを 本作を読んでいると、再認識させられる。陰惨な拷問のシーンも 自己への問いも 生きる尊さへと繋がっていく。 実際に起こった事をベースに作られたらしいが、あの戦争の悲惨さを今に改めて 伝えて くれる作品である。2018/01/03

ケイ

137
生きるためには、死んでもいいと思えるものがなければいけない。そこに、価値が生まれる。全てがアンビバレントな彼の世界。西洋と東洋。北と南。仲間でない方にいる自分。アメリカ人の描く虚像のヴェトナム。故郷を知らない作者のアイデンティティの拠り所の危うさ...。今のヴェトナムの平均年齢は30歳未満。戦争を知らない世代がほとんど。そこから「戦争のかなしみ」のような文学がうまれ、あの酷い時代を真っ向から振り返ろうとするのはヴェトナム系アメリカ人。力作。2019/02/22

藤月はな(灯れ松明の火)

80
主人公はやむ終えず/咄嗟に殺してしまった亡霊に取り憑かれていくが、この亡霊との会話でデッドプールを連想してしまった。如何してか、彼らはベトナム戦争で蝙蝠のように生き延びるために、殺さざるを得なかった主人公の自我の一部のようにも思えるからだ。だが、拘束の後、睡眠を取らせず、自我を揺さぶる北ベトナムの拷問は『1984年』のようにしんどい。そして『グロテスク』のように最後まで明らかにされない語り手=主人公の名とラストの一文。それは戦争に巻き込まれ、信念を売り渡し、自我を破壊させられても生きた人々への痛みだったか2017/11/04

harass

69
上下巻に分かれて、またやたら長い話かと思っていたのだが、実際手に取ると各300ページぐらいで意外に感じる。主人公の告白体でのみで語られるどっちつかずのベトナム人。物珍しい社会の描写やエロティックさもある比喩表現や語りに感心したのであるが、個人的で偏見に近い経験則「文学受賞作(特に米国)」には身構えてしまったりするというのはやはり覆されなかった。やはり米国人が選ぶ米国人のための小説ということなのか。在米ベトナム人が書いたというのもあるのか。ぜひ読んでくれとまで正直言えない。2018/03/03

future4227

55
難しかったー。ベトナム人から見たベトナム戦争という点では新鮮な内容かもしれない。でも結局なにが言いたかったのかわからない。ベトナム戦争の悲惨さだけは伝わったが。確かに表現力とか文学性は高いのかもしれないが、主人公の思想も行動もよく理解できないし、エンターテイメント性も少ない。コッポラ監督の『地獄の黙示録』が好きなので、映画製作の場面だけは辛うじて読みごたえがあったけど。アメリカ人への皮肉たっぷりの作品なのに、なぜアメリカでの評価が高いんだろう?2017/12/28

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