ハヤカワ・ミステリ文庫<br> シンパサイザー 上

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ハヤカワ・ミステリ文庫
シンパサイザー 上

  • ISBN:9784151828515

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内容説明

「私はスパイです。冬眠中の諜報員であり、秘密工作員。二つの顔を持つ男――」捕らえられた北ベトナムのスパイは、独房で告白をつづる。息もつかせぬスパイ小説にして皮肉に満ちた文芸長篇。ピュリッツァー賞、エドガー賞最優秀新人賞など六冠に輝いた傑作!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

354
本書はピューリッツァー賞をはじめ、いくつもの賞を得ているようだ。ピューリッツァー賞は、わからなくもない。だが、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀新人賞というのはどうだろう。少なくても上巻を読む限りでは、およそミステリ―の要素は皆無に近いと言っていいのではないだろうか。あるいは、下巻では思いがけない展開が用意されているのだろうか。また、そうであるとするならば、今度はピューリッツァー賞の受賞がわからなくなってくる。さて、南ヴェトナム軍大尉にして北のスパイといった主人公の設定は深い意味がありそうだ。⇒2019/07/31

遥かなる想い

181
2018年このミス海外第10位。 ベトナム戦争後の北ベトナムのスパイを 題材にした本である。 アメリカ撤退後のベトナムの雰囲気が 生々しい。語り手である南ベトナムの 大尉の視点は、ベトナム人から見た アメリカへの感情を現代に蘇らせては いるが…上巻はひたすら語り続ける スパイの猥雑な終戦後の映像の世界だった。 2018/01/02

ケイ

122
I am a spay, a sleeper, a spook, a man of two faces. Perhaps not surprisingly, I am also a man of two mind...、書き出し。原語のわかりやすさに比して日本語訳が読みにくく、進まず。前半を読む限り、映画「ドミノ」の手法を思い出す。取調官へのconfession。自分の出自、半生、動機、心の動き。さらに、アジア系であるがゆえの心の揺れ。痛みが、あちこちに散らばっている。2019/02/14

藤月はな(灯れ松明の火)

83
美しいベトナム人の母とフランス人の神父との間に生まれた主人公。ベトナムで蔑まれて生きて来た彼はやがて北ベトナムの二重スパイとなって南ベトナムへ入り込み、アメリカに渡るが…。ナボコフよりも優しくも楽しい二重となった言葉遊びだが、『1984年』の二重思考や『われら』の思考回路と重なり、不穏感も覚える効果を発揮している。そして主人公の自己弁護と苛まれる被害者意識が少し、鼻に付くのもきになる。しかし、チャイナタウンでの生活の居候のような窮屈さやそこで真のベトナム料理が食べられない事への嘆き、下ネタ関連は笑ったけど2017/11/04

harass

80
ピュリッツァー賞やエドガー賞など六冠達成という小説。ベトナム奪還の野心を抱く、元南ベトナムの将軍の部下である主人公には秘密があった。実は北ベトナムのスパイのなのだ。饒舌に語る彼の奇妙な生涯。仏人との混血であり、サイゴン脱出から難民としての米国での生活、ベトナム戦争の映画制作。どっちつかずの主人公の視点からみる米国とヴェトナム。徹底的な主観の告白スタイルは、スパイ小説というよりも純文学「ロリータ」などを連想。そうイメージすると読みやすく感じた。なかなか面白い描写などがあり感心する。下巻に。2018/03/01

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