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内容説明
敗戦の傷痕が残る昭和25年、冬の大阪。「タニザワさんですかっ、ぼくカイコウですっ」。著者と開高健の交遊は初対面としては少々奇妙なこの一言から始まり、平成元年12月、開高が亡くなるその日まで続いた。開高が読みたいといえば、その本を自腹を切って購入し貸し与え、開高の小説「パニック」が昭和33年1月の芥川賞候補になれば、居ても立ってもいられず店じまいまで酒を飲み、早朝、受賞を知るや「放心」してしまう著者。言うことは何でも聞き、することは何でも許す、わずか1歳年長である著者の開高に対する母性のような友情……。それを支えたものは、身近に才能を見ることへの喜び以外の何物でもなかった。そんな友情を結べる友をもつことは、まさに人生の至福だったろう。「開高健が、逝った。以後の、私は、余生、である」。本書の最後はこう結ばれている。生涯の友が「傑出した個性」との40年の交遊を綴った、感動の回想録である。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あかふく
2
デビュー前の出会いから『えんぴつ』時代、芥川賞受賞、ベトナムへの出発までと、死去寸前から葬儀。牧洋子に対する不穏な書き方がある。やはり開高健は牧洋子に魅入られてしまったのか。しかし彼女がいたからこそ、開高健の逸走があったとも言えてしまう。『えんぴつ』など大阪同人誌界隈の出会い、東京へ出て「文壇」と関わることなど、開高健は何か確固としたものにはあらず。小説は素材よりも表現という。2013/09/18
Gen Kato
1
再読。奥さんの存在がやはりミステリアスというか鍵というか、もしくは闇ですね。2015/07/21
tsukamg
0
結婚は開高健にとって失敗であったかのように書かれており、夫人の牧羊子についての記述が悪意に満ちている。夫が没して2年後にこんな本出されたら、遺族はたまったもんじゃないな。牧羊子はともかく、娘の道子さんにしてみれば、じゃあ私は生まれるべきではなかったの? と思っても仕方ない。2016/09/28