内容説明
「寂しい大人になりたくない」吉谷美鈴。
「馬鹿な大人になりたくない」雨宮達彦。
「ぼくは一体、どんな大人になりたいんだろう」と、本書の主人公・秋庭樹。
中学2年の4月、進路指導調査書を白紙で提出したことを、担任からとがめられ、樹は自分の将来について、否応なしに考え始める。
実業家である父親は、小さな建設会社を足場に、高利の貸付、土地の売買、レストラン・スナックの経営などで成功をおさめていたが、地元の人からはよく思われてない。
父が経営する店の一つ、トップレスバー〈フラワーヘブン〉の踊り子・ナンシーさんの踊りを見て以来、彼女のことが気になって仕方がない――。
幼なじみである、成績抜群なのにどこか冷めている達彦・病弱な母に変わって家庭をやりくりする美鈴。地方都市の小さな町を舞台に、中学2年生の幼馴染み3人組が、迷い、悩み、成長していく姿を瑞々しく描く。
文庫化を機に、19年ぶりに大幅改稿。5年後の3人を描いた中篇「フラワーヘブン」を特別収録。あさのあつこの原点ともいえる、傑作青春小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
hnzwd
46
受験を控えた中学生三人が、悩み、ある事件を通してちょっとだけ成長する中編。主人公は父親がヤクザのような商売をやっているのに、それに反発する訳でも、受け入れる訳でも無い男の子。無気力に近く、諦めているのでもなく、日々流されている感じ。そんな主人公が、父親が経営するバーのダンサーである女性と出会い、最後は少しだけ成長する。初期作品とのことで、the manzaiとかに近い文体かな。書き下ろされた7年後の彼らの姿もまた良かったです。2017/07/28
はるき
39
昔、児童書として読んだ。大人の思惑に振り回されたくない。でも、いつまでも子供じゃいられない。あさのあつこさんらしい良書です。2017/06/01
baba
33
中学2年の幼馴染みの3人。家族と学校と狭い世界で「寂しい大人になりたくない」「空っぽの大人になりたくない」と思う思春期の大人としての親の存在に悩む。あさのさんらしいそれぞれの心情を吐露して繊細な気持ちが伝わってくる。19年振りの再出版と言うが、時代が変わっても子どもの置かれた立場は変わらない。2017/06/30
ましゃ
31
地方都市の小さな町に住む幼なじみの中学2年生3人の惑いと成長を描いた青春小説。今が楽しくないのに、自分の『明るい未来』なんて思い描ける訳がない。中学生なら誰もが持つ葛藤だと思う。進路について考えさせるのではなく、やりたい事を見つける事こそがこの年代にとって最も大事なのではないだろうか。十代のころ掴んだ若く、青い、甘い夢。たいていの人はそれを捨てることで大人になっていく。捨てて身軽になって新たな道を歩み出す人もいるけれど、十代を背負ったまま大人になる人だってきっといる。青春とは戦い、強くなり大人になるのだ。2021/01/01
シュナ
12
共感まではいかないけど、自分達の問題に親が出てきたり、親と上手く話し合いが出来ないもどかしさは分かる。 大人達は、子供はまだまだ未来があると言うが、当の子供は未来が見にくい。 子供は"今"こそが全てだから。2017/05/18




