内容説明
かつて敏腕セールスマンで鳴らしたウイリー・ローマンも、得意先が引退し、成績が上がらない。帰宅して妻から聞かされるのは、家のローンに保険、車の修理費。前途洋々だった息子も定職につかずこの先どうしたものか。夢に破れて、すべてに行き詰まった男が選んだ道とは……家族・仕事・老いなど現代人が直面する問題に斬新な手法で鋭く迫り、アメリカ演劇に新たな時代を確立、不動の地位を築いたピュリッツァー賞受賞作
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
167
若い読者には想像力で補ってもらう以外にはないのだが、40代以上の読者は身につまされて涙なしには読めないのではないだろうか。ここではアメリカの小市民社会の夢と希望が無残にも打ち砕かれていく様が、如実に描かれる。1949年の初演だから、時あたかもマッカーシズムの嵐が吹き荒れた頃だ。劇は反資本主義を掲げるものではないが、その行き着く終焉をこの家族の崩壊とともに見据えている。彼らにとって栄光は常に過去にしかない。この先には「貧困大国」しかないのだ。息もつかせない展開でその崩壊に向かっていく劇のパワーは圧倒的だ。2014/05/07
アナーキー靴下
48
AIのお薦め本。私はAIのキャラ設定を英国執事ロボット(ずばり言うとFO4のコズワース)風にしているのだけど、本を薦める時に度々「刺さる」という表現を使ってくるのがちょっと嫌。古風な英国執事がその言葉は選ばないだろうと。しかし本書は「刺さる」が最適表現であると認めざるを得ないものだった。甘くて脆くて、何か一番痛いところを強く突かれてしまうのだ。たった一人で生きていたって、何かを誤魔化しながら最後まで生き抜くだろうに、共に生きる家族がいたなら、その誤魔化しはどんどん膨れ上がってしまうだろう。本当に悲しい。2026/04/03
harass
44
いまさら文庫で出てたことを知り読む。米資本主義社会を舞台に描いているがどの時代社会でも普遍の部分があり身につまされる。特にあるていどの年齢を過ぎたものにはああと声をあげてしまうだろう。家族の関係もテーマのひとつであり、因果話の印象もある。1949年初演でこんな話を書いていてはアカ扱いされるのもやむなし。ウィリアムズの戯曲もそうだが舞台の指示が細かくそういうものも考えてあるのだなあと、不慣れな戯曲というジャンルの名作を読みたくなった。演劇を見るのが一番だが二回映画化されているようで改めて見直してみたい。2015/02/09
Miyoshi Hirotaka
33
自立しない子供達とままならない現実の板挟みで疲れ果てた年老いたセールスマンが、何もかもから見放されて死を選ぶ。いたるところに映画のフラッシュバックのような手法が取り入れられ立体的。一流のセールスマンだった自分やフットボールのエースだった長男は過去の夢。販売不振になればあっさり解雇され、数学の単位を落として落第し、その後は転落の道を歩んだ。一方、隣人は金持ちになり、その息子は弁護士。人生の明暗が別れた。死亡保険金で家のローンが完済されたが、楽しかった家庭はもう戻らない。最後まで一つもいいことが起きない物語。2017/07/22
NAO
31
再読。大学1年の時の基礎英語で原文で読んだ。成功者を夢見、夢は破れたというのに現実を見つめられなくなってしまったセールスマンの悲劇。平凡な人間の平凡な生活とその破綻を、ここまで残酷に描く手腕はすごいと思う。身分不相応な夢は身を滅ぼす。もうすでに、アメリカンドリームの時代は終わってしまっているのだから。子どもにかけた過度な期待が子を滅ぼすという点でも、身につまされる話だった。2015/09/09




