内容説明
爆買い、インバウンド、東京オリンピック……。訪日外国人の急増とデフレの慢性化で、国策としての「観光立国」への期待が急速に高まってきた。しかし、日本のリゾート・観光地の現場には、いまだに「団体・格安・一泊二日」の旧来型モデルに安住している「地域のボスゾンビ」たちが跋扈している。日本を真の「観光立国」たらしめるには何が必要なのか。地域振興のエキスパートと観光のカリスマが徹底討論。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
おかむら
36
後半の対談部分が楽しい毒舌。自治体や観光協会、旅館組合、広告代理店、旅行代理店の利権しがらみ忖度が地域再生の足枷に。イベントやキャンペーンってなるほどそういう仕組みなのねー。あと外国人観光客の目線で見るとまだまだ不便な日本。YOUは何しに見てるだけでは気づかなかったよ。そして個人的には新しい試みをなにもしてないような寂れた観光地(熱海とか)も好きなので逆の意味でも参考になりました。2017/04/28
T2y@
18
観光地から、訪れる人も住まう人にも〝感幸地〟へ変わる事。モデルケースとして紹介されている、スイス ツェルマットに俄然興味津々。山登り・スノボの為、山岳地方を訪う機会が多い私としては、有名温泉地の、うまく行っている観光組合と、そうでないところの、実名暴露がなかなかに刺激的。提言にあった、旅館の所有と、経営をわける考え方はなるほどなと。確かに、星野リゾートも運営特化モデルで成功を収めている。 2017/01/24
おせきはん
10
現在の観光地のPRにおいて、今あるものをそのままアピールするプロモーションが中心になっており、誰にアピールするかのマーケティングの発想が弱いという指摘は、その通りだと感じました。地域にあるものを生かすためにも、マニュアル化された「おもてなし」や通り一遍のボランティアガイドで画一的なサービスを押しつけるのではなく、それぞれの地域ならではの「今だけ、ここだけ、あなただけ」のサービスを充実させ、観光客の多様なニーズに応えられるようにする必要があると思いました。2016/11/23
警蓮社峻譽身阿
9
二度目の読了。地元は全国的に有名な観光資源を持っているが、地域所得も生産年齢人口もしっかり右肩下がりで活気もない。また狭いくせに観光協会も複数あり、地域の開発や宿泊業者の方向性にもバランスを欠く。まさに本書で取り上げられているような典型的なプロダクトアウトな失敗観光地だ。読みながら落ち込んでしまうぐらい打ちのめされました。2021/11/09
ろべると
8
各地の観光地の再生や活性化に取り組んできた著者。地域住民が一体となって新たな取り組みを始めており、成果が出ている所もある。しかし本書全体を重苦しく覆うのは、行政や地元観光業のドン、大手旅行会社や鉄道会社などの無理解や圧力との戦いである。キャンペーン広告を打ち、団体旅行客が一泊だけの滞在で落としていくお金で食いつなぐ日々。そして行政による一律ディスカウントでの振興策。旅行者数だけが評価の指標。終わった後は何も残らずリピーターも来ない。観光だけでないが、この構造的問題が変わらない限り、日本の将来はないだろう。2023/05/22