内容説明
巨星、堕つ――。1996年2月12日、十年間続いた『文藝春秋』の巻等随筆「この国のかたち」は、筆者の死を持って未完のまま終わることになった。本書は絶筆となった「歴史のなかの海軍」の他、書き言葉としての日本語の成り立ちを考察した「言語についての感想」「祖父・父・学校」などの随想、講演記録「役人道について」を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゴンゾウ@新潮部
125
司馬さんの急逝により未完のまま終わることとなった「この国のかたち」。日本人を思い、過去の歴史からこの国のかたちを模索しこの国の未来に思いをはせた司馬さん。もし彼が現在の日本を見たときどう思うのだろうか。2017/11/23
カピバラKS
76
●平成8年の文藝春秋巻頭随筆等(著者急逝で絶筆)●著者は手相や星座占いについて、未開の闇に置き忘れた迷信とし、戦前に流行はなく、文明度の高い江戸期にはわずかしかなかったという。●余りの手厳しい評価に、朝番組で今日の星座占いを観て気分を高めることさえ、気後れしそうになる。●なぜ迷信に依存するのか。それは日本人の8割以上が都市生活を送り、かつての単純な田舎暮らしとは異なる苛烈な競争のもと、方途を自分で決めなければならない苦悩が背景にあるという。●著者の厳しくも温かい大衆観が心に残る。2024/09/29
Die-Go
70
迂闊にも初読。絶筆となった「歴史の中の海軍」をもって、「この国のかたち」は終わっている。もうこの続きが書かれることはない中、司馬遼太郎さんは今のこの国を見て、何を思うだろうか。やはり旧アジアの残骸を見出だしてしまうのではないだろうか。我々はこれを読んで何を為すべきか。★★★★★2016/03/24
k5
68
「都市は、何らかの意味における多様な才能の市と考えてよい。頭脳が買われ、学歴が買われ、運動能力が買われ、平凡な作業に耐えうる持続的な性格が買われる」。引用した表現そのものも面白いですが、「多様」や「持続的」など昨今よく聞く表現を使っていたのもこの作家の特徴かと思います。画一化された組織の弱さを描くとともに、一方で「典型」というものには大きな価値を見出すのが司馬さんの面白いところですね。この間は日本語論のところがとてもよいです。週刊誌の言葉が日本語の水準を固めたというところはもっと深掘りしたいです。2024/04/30
優希
59
未完のまま終わったのが残念です。歴史における海軍のあり方他、日本語への考察、随想や公園記録など全てが司馬史観のエッセンスのように思いました。日本という国を様々な色彩で見るのが面白かったです。2023/03/29