内容説明
マッターホルン、アイガー、グランドジョラスと、女性で初めてヨーロッパ三大北壁に挑む淑子、新婚山行をドリュー西壁に試みる美佐子……医師と彫刻家、仕事を持った二人だが、ますます岩壁登攀に青春をかけていく。対照的な二人の女性登山家の姿を通して描かれる、山とは何か、山になぜ登るかへの問い。『孤高の人』、『栄光の岩壁』につづく、三部作の掉尾を飾る山岳小説の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
74
マッターホルン北壁登攀に成功した、駒井淑子は医者の道へ、若林美佐子は鎌倉彫の道と進む。淑子は、医師をしながらジャグ山岳会の元で、アイガー北壁登攀を成し遂げ、結婚を機に、グランドジョラス北壁登頂に挑み、成功し、三代北壁登頂の快挙を成し遂げる。若林美佐子は結婚し、夫と結婚山行でドリュー西壁に挑むが、遭難死。二人の登山人生を、アルプスの自然描写やクライマーの心の動きを巧みなタッチで描いた力作。新田次郎にしか書けない山岳小説、存分に楽しませて貰った。山になぜ登るのか、女性クライマーの姿を見て少し分かった気がする。2025/12/24
goro@the_booby
59
実在の人をモデルに新田次郎が書き上げた物語。離れてしまってもザイルは切れず固く結ばれている二人の女性登山家、淑子と美佐子。新田次郎は二人の足跡を残しておきたかったんだろうな。下巻ではアイガー北壁、グランドジョラス北壁へと挑む淑子と鎌倉彫に山への想いを刻む美佐子の姿に心惹かれる。美佐子さん強い人だったのですね。2018/03/27
大阪魂
58
下巻一気読み。上でマッターホルン制覇した淑子。下ではアイガー、グランドジョラスって欧州三大北壁を制覇!でも読めば読むほどこんな氷壁のぼりってほんま人間業とはおもわれへん、おれにはよーできひんわ、ってつくづく思わされた…岩壁から落ちたとこなんかいまの自分の身につまされてうわって…北壁制覇より面白かったんは淑子、美佐子2人めぐる男たちのアプローチ合戦、2人ともこの人と?ってびっくりしたけど、やっぱ素直で丁寧が一番なんかなあ(笑)グランドジョラスでの結婚式、ドリュー西壁をとぶヘリコプター、結末哀しすぎやったね…2022/04/08
にし
43
やるせないラストです。女性が岩盤に挑み、愛する男性とザイルを組むと言うことが重くのし掛かります。クライミングと鎌倉彫りとが融合し美しい紋様が浮かび上がる。ラストの切なさは読んだ人でないと解らないかも。2015/05/18
まーみーよー
35
良かった。登攀の描写が素晴らしい。特にアイガー北壁登攀の場面は、手に汗握ってハラハラしながら読んだ。読了後にモデルの登山隊が実際にアイガーでハンモックで休んでいる画像を見て背筋が凍った。そこまで危険な場所で休まねばならない岩壁をなぜ命がけで登攀するのか。命を燃やして登攀する情熱が、すごい。ラストシーンは切ない。2025/03/21
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