内容説明
将軍御狩りの日、暗殺の陰謀を防ぐべく八代・吉宗の身代りとなった五兵衛は、危うく一命をとりとめた。一方、尾張家に荷担、暗躍したかつての剣友・佐和口忠蔵は死んだ。二十年後、五兵衛には、盗賊・日本左衛門との人生最後の対決が待っていた。三河・遠江一帯を傍若無人に荒しまわる、尾張家のはみ出し者らしい……。五兵衛、五十七歳――不屈の魂は、また燃え立った。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
79
まさに秘図そのものの流れへと流れ着いたようでした。吉宗暗殺で危うく一命を取り留めた五兵衞。その一方でかつての剣友・佐和口の死は胸が痛みます。時は流れ、人生最後の対決に挑む五兵衞。一度は落ち着いたように見えた魂が再び燃えるのを感じたとき、この手の小説はワクワクしますね。最初に侍女と関係を持ったときから五兵衞の女好きは変わらず、秘図に夢中になる男というのも、剣に血をたぎらせて生きてきた生涯の裏の顔であり、この二面性が男を一人前のように突き動かしていたのだと思います。波乱の人生、楽しませて頂きました。2016/05/31
優希
50
暗殺の陰謀を防ぐために動いた五兵衛ですが、一命を取り留めます。そしてその後には人生最後の対決が。五兵衛の不屈の魂は常に燃えていたことでしょう。一方、妻との性生活がうまくいかないため秘図を描き続けることに密かな楽しみを見出していったのだと思います。『おとこの秘図』はまさに満足のいかない性に対する自らの想いを満足させることに繋がっていたのですね。2023/02/23
けやき
44
将軍暗殺を防いだ五兵衛。その後二十年を経て、火付盗賊改となり、日本左衛門を捕縛する。余生は秘図を描き鑑賞しながら過ごす。最後秘図の行方がどうなるかは読んでのお楽しみ。いい作品でした。2023/07/16
誰かのプリン
18
50代にして、火付盗賊改に任命されかの有名な日本左衛門一味を捕らえた徳山五兵衛にこんな趣味が有ったなんて。その時の顔はどんな表情だったのだろうか。★★★★★満点2019/05/05
Kira
13
再読。下巻では、徳山五兵衛がお役目に精を出す姿も描かれる。妻との性生活が満たされず、秘図を描くことにひそかな楽しみを見出した五兵衛の生涯は、それなりに満足なものだったのではないだろうか。五兵衛の最後の絵巻物は、はたして灰になったのだろうか?2022/05/25