内容説明
台湾への進出が成功、さらに戦争特需の波に押され、一隻の小舟から世界に冠たる巨艦となった鈴木商店。しかし戦後不況という時代の潮に揺さぶられ、やがて関東大震災がもたらす未曾有の衝撃が、その船体を歴史のはざまへと沈めてゆく──そんな困難の中でも、彼らが最後まで捨てられなかった、商売人としての哲学と希望は何だったのか。幻の商社の短くも太い航跡、感動の完結編。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
79
今や伝説となった巨大総合商社・鈴木商店の興隆と崩壊。巨大なものが崩壊する様には悲しみに似たやるせなさが伴う。それはある意味「美」である。無から様々な事業を興し、どんどん巨大化しやがて自分ではコントロールできないほど巨大化した瞬間に一気に瓦解する。そこに崩れゆくものの美しさがある。そしてそれは人々の記憶に残り、語り継がれ伝説となる。目には見えないがそれは鈴木商店のDNAであろう。現在の世界経済の中にはそのDNAが脈々と受け継がれている。鈴木商店は歴史の表舞台から消えることによって永遠を獲得したと云える。2013/09/20
キムチ
46
今から思えば、結構に暗い時代‥だが語り口のせいか、活き活き、はつらつと展開して行く。台湾へと手を広げて神戸から飛躍する鈴木商店・・間じかに迫る関東大震災(今だから知っているとはいえ)語ること無く死去した父の姿が目に浮かぶ・・玉岡さんの作品を読みつつ、祖先の生きた時間の体験をなぞる時間の読書。世界(独仏米英他)を今日俯瞰すると、日本の狭隘な感覚を今さらながら思う。家族経営の限界、そして視野狭窄の展望。人間ってそんなものなのだなと思いつつも若い人に読んでほしい「学問ではない学び」が非常にあった。2015/06/30
さぁとなつ
43
「思えば、人の人生は、時間という狂言回しによって、あまりにも巧妙に流れ行く物語だ。出逢って、届かず、別れて、またふいにめぐりあう、そんなことの繰り返し。そのたび、心の熱をやみくもに放出したり落ち込んで冷え切ったり。そうやって時を重ねていく。」珠喜の人生の濃さに涙、鈴木商店が時代に飲み込まれ傾いていく姿が悲しかった 人は淡々と生きているようで、熱い思いを伴いつつその時その時の風を受けながら生きていくものだと思います 顔を知る先祖が生きた時間でもあり、深く考えさせられた 日本人が半端なく日本人であった時代かも2025/03/26
チヒロール
42
上巻同様、読み応えが確かな、歴史大河であった。鈴木商店が総合商社として頂点を極めた足取りや、焼き討ち事件、衰退していく様子が分かりやすく理解できた。たまきと田川さんの悲恋、拓海さんとの結婚も興味深いところ。 身近な山と海に囲まれた神戸の街並も話とマッチしている。2014/07/17
Willie the Wildcat
40
「鈴木商店」の結末とは異なるさわやかさ。「お家さん」の真髄とは何だろう・・・。ぶれない軸で人をとことん信じる、か・・・。それが「珠喜、田川、拓海」、そして「およねとお千」の人間関係にも現れている気がする。一方、ビジネスは”結果”が重要。敢えて言うのであれば、”近代化”の波に乗れなかったのかもしれない。しかしながら、ビジネスのみならず日本国の礎を築くのに果たしたその役割に敬意を払うべきと考える。無論、現在においてもトップノッチでしのぎを削る旧系列会社が多々存在していることは、納得感もあり、驚きでもある。2012/04/23
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