内容説明
江戸時代の初期から、各藩で発生したさまざまな「お家騒動」。原因となったのは、金銭をめぐる対立や父子の不和、家臣による派閥争いなど、現代に通じるものばかりだった。島津、伊達、黒田、加賀、秋田、越前といった各騒動の真相を、説得力あふれる筆致で描き出す。武士の本質に迫る、海音寺史伝文学の真骨頂。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ブラックジャケット
8
歯ごたえのある歴史ものを読みたい。ふっと眼に止まった本書。そうだよ、お家騒動こそ武家社会を知る最良のケーススタディ。継嗣問題は最大の騒動ネタ。赤上げて、白上げないで赤上げて、…とまあ主家は二分される。賢愚だけでなく、殿様の性格でもお家は左右される。宮仕えはつらいよ、騒動編となる。家柄家老、仕置家老の違いもなるほどと思わせる。世襲は人材の停滞を招き、実力派を登用すれば波風が立つ。派閥問題がこじれてお家騒動も多い。金銭、知行がからめばさらに泥沼。著者は資料を駆使して、客観性を保ちつつ実態を探る。下巻へ。 2020/03/03
穀雨
3
島津、伊達、黒田、加賀などで起きたお家騒動が紹介されているが、その原因としては家中の派閥争いが多く、鉄板だと思っていた継嗣問題はほとんどなかったのが意外だった(下巻で出てくるのかな?)。派閥争いは古今東西、どういう組織でもありうると思うので、二百六十年あまりを通して本書のようなケースしか発生しなかったことを踏まえると、むしろその件数は少ないように思えた。2020/05/28
広瀬研究会
3
昨今のご当地ブームを見るにつけ、もっと地域史とか郷土史が盛り上がってほしいなあという思ってるから、こういう本はうれしいです。島津、伊達、黒田、前田、佐竹、越前松平。いろんな時期にいろんな土地で騒動が起きてるんですね。中でも『黒田騒動』の栗山大膳の行動は、意外性があって面白いなあ。2017/01/08
すんすけ
1
江戸期の諸藩のお家騒動については、三田村鳶魚の実録物研究以来色々な話が積み上がっている。しかし考証が行き届いているという点においてはこの「列藩騒動録」はかなり良い。師匠の鳶魚をあるところでは超えているのではないか。海音寺潮五郎はもっと評価されて良い作家だと思う。2016/08/31
らいしょらいしょ
0
相当な資料から読み取れる、各藩のすったもんだを書き連ねてある。たいした労力だと感心するものの、ストーリーには欠けるように思うので、読む人を選ぶかな。一応下巻もある。どうするか。2017/12/04